貧困の南アジア、飢餓人口は1億人増え4億人強

 ユニセフ(国連児童基金)の報告(先月末まとめ)によると、南アジアでは飢餓に瀕する人口がこの2年間で1億人増えた。4億人以上が慢性的な飢餓状態にあるという。

 地球温暖化や農地の宅地化がベースにあるが、米国発の世界経済危機がこの地域の貧困に拍車をかけ、飢えに苦しむ人を増加させた。報告書は、経済危機の影響を強調する。

 また、BBCは世界銀行の統計として、南アジアの人口の4分の3にあたる12億人が1日2ドル以下で暮らす、としている。逆に言えば2ドル以上の生活をしている人は、4分の1しかいない。

 筆者は南アジアの国々を取材で歩いたが、高温多湿で水が豊かだ。川は大蛇のようにうねりながら大地を潤す。2毛作は当たり前、3毛作が可能な地域も珍しくない。世界の穀倉地帯となり、もう少し豊かになってもいいはずだ。

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くず鉄を拾い集める少年たち(スリランカ北部で。写真=筆者撮影)

 だがインド以外の国はGDPも低く貧しい。そのインドも富裕層はほんの一握りだ。大概の国は軍事政権か、隣国と戦争をしていたりする。ただでさえ経済力は脆弱であるにもかかわらず、軍事費の占める割合が大きい。

 アジア有数の貧国パキスタンは、軍事費がGDPの3%を占める(2007/08年)。世界一の軍事大国アメリカでさえ4・06%(05年)なのにだ。アジアの軍事大国中国は4・3%(06年)で、隣国のインドは2・5%(06年)となっている(数字はいずれもCIA world fact book)。

 イスラマバード国際空港に夜着くと、空港の手荷物引取り所は裸電球で薄暗く、目を凝らして自分のラゲッジを必死で探す有様だ。空港の周辺も真っ暗だった。ホテルはしばしば停電した。電力供給が満足でない証拠だ。鉄道は大砲や武器・弾薬を載せた列車が優先する。国民経済よりも軍事が大事だ。

 軍事偏重の国は治水に満足な予算を割けない→大雨が降ればすぐに洪水となる→田畑が流される。世界の穀倉地帯となれるだけの自然環境を持ちながら、自国民さえも満足に食べてゆけない構図だ。

 教育にも十分な予算を回せないので、生産性はあがらない。国はいつまで経っても豊かにならない。言い古されたことだが、貧困から脱出するには軍事を優先した体制をやめることだ。

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