羽田の「真当なハブ化」急がねば先進国から脱落する

 もう“時効”だから話せるが、筆者は学生時代、「三里塚」に足を運んでいた。飛行を物理的に阻止する「鉄塔」がまだ残っていた昭和50年代初期の頃だ。北総台地の赤黒く湿潤な土は三里塚が肥沃な農地であることを物語っていた。畑から採れる白菜の大きさに驚きながら「何でこんな所に無理して空港を作るんだろう?」と怒っていたことを昨日のように思い出す。

 「権力から土地を守る戦い」と訴えていた反対派のカリスマ的リーダー(名前は失念)は、PLOのアラファト議長に面会し戦術を授けてもらうため、わざわざ中東に飛んだほどだ。リーダーの首にはアラファト議長からプレゼントされたというカフィーヤ(マフラー)が巻かれていた。

 機動隊の催涙ガス銃に対して空港建設反対派は火炎ビンと投石で応戦、双方に死者が出た。一億総中流だった平和な日本の「パレスチナ紛争」と言えなくもなかった。

【途上国空港のワイヤレス・サービス】
 多大な犠牲を払って開港した成田空港だったが、恐ろしく不便な空港となった。世界の航空会社にとっても利用者にとっても、だ。

 空港特別会計に“上納”しなければならないこともあり、成田空港の着陸料はバカ高い。ジャンボ1機につき1回95万円と世界一高い。仁川空港(韓国)の3倍、チャンギ(シンガポール)の4倍強だ。高い着陸料は運賃に跳ね返ってくる。利用者の負担増となるわけだ。

 しかも滑走路が2本しかなく、内陸空港のため深夜・早朝の離発着ができない。当然、航空機の発着回数も制限されてくる。これでは空の国際競争に勝てるわけがない。人も貨物も入ってこなければ、日本経済も沈下する。

 韓国のナショナルフラッグである大韓航空機が、ヨーロッパの辺鄙な所まで乗り入れているのを見て驚いたことがある。アジアのハブの代表格とも言われる仁川空港から人と物を運ぶからだ。日本は中国だけでなく韓国からもGDPで追い越される日が、やがて来るだろう。

 成田は空港会社が国交省(旧運輸省)官僚の天下り先となったことから、利便性の追及などは二の次、三の次となったのである。筆者は海外の空港を利用する機会が多いが、成田ほど不便で利用者に苦痛を強いる空港はない。

 出国・帰国ゲートと搭乗口・到着口の間に小型のカートがないため重い手荷物を両手に下げて長い距離を歩かなければならない。「本当に先進国の空港だろうか?」と疑いたくなる。経済成長著しいドバイの国際空港は、エコノミーの客でも電気自動車に乗せて搭乗口まで運んでくれる。

 途上国の空港でもインターネットのワイヤレス電波が飛んでいる空港がある。トルコのアタチュルク国際空港だ。ラップ・トップのキーボードを叩きメールのやりとりをするビジネスマンで活気に溢れていた。もちろん無料だ。わずか1~2台の備え付けデスクトップしか使えず、しかも料金カード払いの成田とは大違いである。

 どうしたら客を喜ばせて呼び込むことができるか。どこの国も真剣に考えている。一空港の視点からでなく国の盛衰に密接に関わるものとして取り組んでいるのだ。

 羽田のハブ化を急がねばならないのは言うまでもないが、世界に通用する便利な空港にしなければならない。官僚主導にすれば、東京都内にただ滑走路の本数が多いだけの「成田空港」がもうひとつ誕生するだけだ。そうなれば日本は、先進国クラブと言われるOECDからも脱落してしまうだろう。

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