健在なり 「ロシアのイスラム尖塔」

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モスクワ郊外のイスラム寺院。一見キリスト教会を思わせるが尖塔もそびえる(写真=筆者撮影)

 空に向かって突き出した円錐の筒の先に三日月を戴く。尖塔(ミナレット)はイスラム寺院のシンボルだ。スイスでは先月29日、尖塔の新規建設の禁止を求める国民投票が行われ可決された。当然、世界中のイスラム教徒の反発を招いている。

 国連の諸機関が本部を置く永世中立国のスイスは、宗教には寛容ではないようだ。国連のピレイ人権高等弁務官は「宗教間に溝を作り出す。スイスにとって嘆かわしい一歩」と批判した。

 一方チェチェンを抱えるロシアは、イスラム教徒に厳しいのかと思っていたら、それほどではなかった。

 モスクワ郊外を車で走っていると忽然とイスラム寺院が現れた。ペルシャンブルーが中東の雰囲気を醸し出す。金製の尖塔が冬のツンと晴れ上がった空に映えていた。

 ロシア正教に配慮して外見はキリスト教会を思わせるが、寺院の中は分厚いペルシャ絨毯が敷きつめられ、コーランの朗唱が響いていた。教徒たちがメッカの方向に一斉に頭を下げると「ザーッ」と空気が動く音がする。そこは紛れもなくイスラム世界だった。金曜礼拝である。

 中央アジア出身というイスラム教徒は「911以降、変な目で見られるようにはなったが、イスラム教徒だからと言って治安当局に締め付けられるようなことはない」と話した。

 ロシアはイスラム教徒が全人口の10~15%をも占める。1,500万人をゆうに超すのである。強権支配で鳴るプーチン政権といえども容易には弾圧できないのであろうか。

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