解放の常岡氏、カルザイ政権の腐敗語る

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常岡浩介氏。前日帰国したばかりにもかかわらず疲れた様子はなく、拘束期間中の出来事を雄弁に語った(7日、日本海外特派員協会=東京・有楽町=。写真:筆者撮影)

 アフガニスタン北部で誘拐され5ヶ月ぶりに解放されたジャーナリストの常岡浩介氏(41歳)が7日、日本外国特派員協会で記者会見を持った。常岡氏の話から浮かびあがったのは、カルザイ政権の腐敗ぶりだった。

 常岡氏を誘拐した武装勢力の名は「ヒズビ・イスラミ」。拉致されて18日目、武装勢力の一人から携帯電話を渡された。電話の相手はカブールの日本大使館だった。「『タリバンに誘拐された』と言え」と強制された。ヒズビ・イスラミはタリバンの名前を使い日本政府をゆすったのである。(当初、「タリバーンの犯行」と報道されたのはこのためだ)
 幽閉されていたのは民家で食事は日に3度、ラマダン月は夜間に2度出た。武装勢力は皆、フレンドリーで暴力をふるわれたことは一度もなかった。「シャミール(常岡氏のイスラム名)、元気か」と毎日声をかけてきた。(長期間にわたる拘束の疲れがあまり見られなかったのはこうした環境下に置かれていたからだろう)
 ヒズビ・イスラミの司令官はカルザイ政権の中枢に近い人物とされる。日本政府関係者は筆者に「政府は身代金を払っていない」と言い切る。

 参院外交防衛委員会のメンバーでアフガン情勢にも詳しいある議員は次のように話す。「日本政府はアフガニスタン政府に多大な援助をしている。何かで穴埋めするということでカルザイ政権に身代金を出させたのではないか」。この説がもし正しければ、カルザイ政権ぐるみの誘拐ということになる。同政権は身内に金を払っているのだから。

 世界最貧国のひとつにあげられるアフガニスタンで一日3回(ラマダン月は2回)、5ヶ月間、無料で食事を出し続けたのである。身代金を受け取ることなしに人質を解放したのでは武装勢力とて「大赤字」となる。前出の参院議員の説には頷けるものがある。

 筆者は2度ほどアフガンに入った。警察官は外国人とみれば難クセをつけて金を要求してくる。金さえ積めば強盗殺人犯だって刑務所から出獄できる。カルザイ大統領の実弟が麻薬王というお国柄である。公権力は腐敗しきっていた。こんな国に日本政府は巨額の資金援助をしようというのである。

 ワイロが支配する政府の下では、民間も金で簡単に転ぶ。日本人を拉致して武装勢力に売り渡すアルバイトもある位だ。筆者がアフガン取材中、最も恐かったのは誘拐だった。常岡氏の無事の帰還を喜ばずにはいられない。


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