火を噴くような検察批判のなか、元検事総長の但木敬一委員の発言がふるっていた―
「今回の事件で164日という長きにわたって村木局長の自由を奪ってしまった。検察官がよって立つ客観的な証拠を改ざんするということはあってはならない。痛恨の極みです。それをやった(前田恒彦)検事が検察に身を投じる時(任官時)は、有為な青年であり健全な正義感を持っていた・・・(後略)」。
但木委員は問題を大阪地検特捜部の前田検事による事件に限定しようとしているのである。江川紹子委員が「大阪地検特捜部のとんでもない検事がいたという問題ではない」、宮崎委員が「トカゲのシッポ切りに興味はない」と指摘しているのにもかかわらず、だ。
但木委員は特段、江川委員らに反発しているわけではない。検察庁の考えを示すものとしてごく自然に発言したまでだ。大阪特捜部の問題に限局して処理してしまおうというのが真意なのである。
各委員の挨拶が終わった時点で報道陣は退出となった。会合終了後の座長記者会見では、記者団から「フルオープンにしないのか?」との質問が相次いだ。
千葉座長は「原則公開にする」方針を示した。「何が『原則』にあたるのか?」と記者団。同座長は公開できない案件として「プライバシーに関わる事柄」「公判前の事件」などを挙げた。
検察はこれらを楯に「密室での取り調べ」を当たり前のように特権化し、無理な自供を強いてきたのだ。それが数々の冤罪を生み出してきたのである。「検察は『プライバシー』と『公判前』を隠れ蓑にしてきたのではないだろうか?」「名前とか地名を隠せばプライバシーは守れるのではないか?」筆者はこう千葉座長に質問した。
答えは「捜査が進んでいるものについての公開は難しい」ということだった。
座長は公開できないものにもう一つ「人事」を挙げた。無罪を出すと昇進に響く。一生田舎暮らしとなったりもする。このため検事たちは被告に無理な供述を迫るようなことになる。甚だしきは物的証拠さえも改ざんするのである。拙ジャーナル「特捜検事逮捕『地方はイヤだ』が招く改ざん」(9月22日付)に詳しく記しているのでご覧頂きたい。
千葉座長に問うと次のような答えだった。「人事のシステムはどうなっているのか、正確なことを検討会議の中で議論しなければならない。だが公開すると検察側から資料が出てこなくなったりする」。
こうして肝心要、核心の部分は非公開となるのである。検討会議は法務大臣の諮問機関だ。強制力はない。検察の問題点を改善する処方箋が出たら、世論に訴えて効力あるものにする必要がある。検察に遠慮していたら、冤罪はなくならない。
※参考記事
「特捜検事逮捕『地方はイヤだ』が招く改ざん」
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