野宿者 「スカイツリーができて何もいいことはない」

野宿者を押し潰すかのように聳え立つスカイツリー。貧者には何の恩恵ももたらさない。=31日、墨田公園・台東区。写真:島崎ろでぃ撮影=

野宿者を押し潰すかのように聳え立つスカイツリー。貧者には何の恩恵ももたらさない。=31日、墨田公園・台東区。写真:島崎ろでぃ撮影=

 年の瀬にホームレス(野宿者)のビニールテントが並ぶ墨田河畔を歩いた。今年5月に華々しく開業したスカイツリーの足元である。

 路上に弾き出されて2年になるという野宿者が、寒空の下ぼんやりとベンチに腰かけていた。タバコを渡すと「ポックリ逝くと楽なんだけどなあ」とぽつり。

 建設業に従事していた彼は「スカイツリーができて何もいいことはない」と吐き捨てた。マスコミは明けても暮れても「スカイツリー」だった。それも陽のあたる部分だけ。

 厚労省の統計によるとホームレス(野宿者)の数は年々減少している。これを額面通りに受け取ったら大間違いである。野宿者が貧困ビジネスの食い物にされているため、統計上住居があることにされているだけなのだ。その数は1万人にも上る。
 
 貧困ビジネスは、アパート(住所)を提供する見返りに野宿者から生活保護費の大半を掠め取る。ひと月に10万円を超す生活保護費をもらっていながら、野宿者本人の“手取り”は3~4万円ほどだ。残りは貧困ビジネスの“主催者”である暴力団などがせしめる。

炊き出しの下ごしらえ。肉や野菜などが煮炊きされていた。=31日、山谷。写真:島崎ろでぃ撮影=

炊き出しの下ごしらえ。肉や野菜などが煮炊きされていた。=31日、山谷。写真:島崎ろでぃ撮影=

 山の手線内側の渋谷まで足を延ばした。美竹公園ではホームレス支援者たちが、炊き出し(共同炊事)に精を出していた。共同炊事は一昨年までは宮下公園で行われていた。

 だが宮下公園が昨年「ナイキパーク」となってしまったため、追い払われた野宿者たちは、昨年末からすぐ傍の美竹公園で共同炊事をするようになった。

 渋谷区が1,700万円/年のネーミングライツをナイキに売った結果、公園は多国籍企業の「私園」となった。富の再分配をすべき行政がハゲタカの手下を務めているのである。

 安倍政権は生活保護予算の切り下げを明言する。福祉を削った分は、米国債の購入やオスプレイなど米国製の兵器購入に回る仕組みだ。

 野宿者がさらに増えることは避けられない。ハゲタカたちが不気味な羽音を立てて飛び回るのが、日本の当たり前の風景になるのだろうか。

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