【チェルノブイリ点描】 プリピャチ 一度も回らなかった観覧車

錆びついた観覧車は風に揺れることもなく、木々の中にポツネンとたたずんでいた。=プリピャチ。写真:田中撮影=

錆びついた観覧車は風に揺れることもなく、木々の中にポツネンとたたずんでいた。=プリピャチ。写真:田中撮影=

 5日後に子供たちの歓声を乗せて回るはずだった観覧車は赤錆びていた。遊園地はメーデーの5月1日に合わせてオープンの予定だった。

 チェルノブイリ原発からわずか5・5キロ、原発労働者の街プリピャチ。家族も合わせて4万5千人が暮らしていた。幼稚園、小学校、ホテル…日本の新興都市を思わせるモダンな街が広がっていた。

 1986年4月26日、チェルノブイリ原発がメルトダウン事故を起こし、大量の放射能を噴出する。プリピャチの住民は全員避難した。

 廃墟だけが残った。子供たちの歓声が響くことは永遠にない。聞こえてくるのは風に舞う落ち葉の音だけだった。

メリーゴーランドも子供たちを乗せることはなかった。=写真:田中撮影=

メリーゴーランドも子供たちを乗せることはなかった。=写真:田中撮影=

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