「大統領選挙の開票に不正があった」としてテヘランなどの主要都市で大規模デモが続き、学生や市民の間に多数の死傷者が発生していると伝えられる。在日イラン人たちが20日、東京・麻布のイラン大使館近くで抗議集会を開き「アフマディネジャド大統領は出てゆけ」などとシュプレヒコールをあげた。
現地からの報道によると、最高指導者ハメネイ師は19日、金曜礼拝で「選挙に不正はなかった」と話し抗議行動の終結を呼びかけた。「流血と暴力の責任は政治的指導層にある」として改革派をけん制した。最高指導者が強い言葉で制止したにもかかわらず、デモは沈静化するどころか勢いを増しているもようだ。
政府当局が都合の悪いウェブ・サイトを規制しても情報の流れは遮断できず、日本に住むイラン人にも実情が伝わってくる。友人や親戚を本国に残し気を揉む在日イラン人約200人が、明治通りの「四の橋交差点」に集結した。50メートルと離れていないイラン大使館に抗議デモをかけるためだ。
ほとんどの参加者がプラカードを掲げている。「自由選挙と宗教の自由を」などと書かれたスローガンや、「警察隊や民兵によって殺害された市民」を写した写真パネルなどが溢れた。わずかな自由を求める市民を政府が武力で押さえ込もうとしているため、イランが騒乱状態になっていることを示している。
都内で貿易会社を営むダニエルさん(42歳)は、イランに帰国し大統領選に投票した。「テヘランの街は(ムサビ陣営のシンボルカラー)グリーンで溢れていた。100%ムサビが勝つと思っていた。ところが日本に帰ってみるとアフマディネジャドが勝っていた。おかしいよ」と肩をすぼめた。
テヘラン大学からの留学生は「武装グループ(保守勢力の民兵組織バシジ)が大学キャンパスや寮を襲い学生たちを殺害した」と声をふるわせた。
麻布警察署が大使館へのデモを許可しなかったため、代表5人が大使館前まで訪れ「不正選挙の調査」「民兵の武装解除」などを求めるメッセージを読み上げ、投函した。
「私たちの投票用紙は盗まれた」「我々はイラン国民の力になる」……。怒気を含んだシュプレヒコールが2時間に渡りイラン大使館に向けて響いた。