大統領選挙に不正があったとして2週間余りに渡ってイランで続く抗議活動は、政府当局による厳しい武力鎮圧が続いている。政府が街頭デモを禁止したことから、人々は自宅屋根の上でシュプレヒコールをあげるが、そこにも民兵組織「ハシジ」が踏み込んでくる。保守派に雇われた「バシジ」は、人々を殺傷する一方で海外放送を受信するパラボラ・アンテナも破壊する始末だ。
本国の状況に危機感を募らせる在日イラン人たちが28日、東京でデモ行進し「市民をこれ以上殺すな」とアピールした。参加者の多くは同胞の死に弔意を表すため黒色の服装で恵比寿公園に集まった。
大多数がマスクやサングラスで顔を隠している。彼らは口を揃えるように「イランに帰ったら死刑にされる」と話す。インターネットの発達で母国の様子を窺うことができるが、同時に自分たちが日本で抗議デモに参加していることをイラン政府も知るからだ。
顔をまったく隠さずに写真を撮らせてくれた男性(44歳)は「今度イランに帰ったら生きて(日本に)戻って来れるかわからない」と肩をすぼめた。男性はエンジニアで年に1度帰国している、という。「イランがまともな政府になるように世界中の人々の力を借りたい」と訴えかけるように話した。
在日イラン人たちは「(最高指導者)ハメネイは恥を知れ」「独裁者に死を」などとシュプレヒコールを挙げた。怒気を含んだ迫力ある声が降りしきる雨のなか響いた。26日の金曜礼拝で高僧が「街頭デモ参加者は死刑になるべき」と唱えたことも彼らを緊張させているようだ。
デモ隊はYouTubeで有名になったネダさんの遺影を先頭に渋谷の国連大学に向けて出発した。ネダさんはテヘランでデモ見物していたところを治安部隊に発砲されて絶命したとされ、その死は政府当局による武力鎮圧の非道さを世界中に訴えている。
ネダさんの遺影を抱いた男性は「(イラン政府はもう)ムチャクチャだ。誰でも殺しちゃうよ」と吐き捨てた。