総選挙公示、民主党は単独過半数を取れるか?

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候補者の演説に耳を傾ける有権者。本文とは関係ありません(都内で。写真=筆者撮影)

 政権選択を一大争点にした衆院選挙は明日18日、公示される。どのメディアも民主党の大勝を予想している。世論調査を定期的に幾度繰り返しても同じような結果が出ており、予想が大きく外れることは先ずないだろう。

 筆者も現場で有権者の声を聞いているが、従来の自民党支持者が「今度ばかりは自民党に入れない」と答える。支持者ばかりか古参の後援会員までが「自民党は一度下野した方がいい」とまで打ち明ける。

 投票日翌日の新聞には「自民惨敗、民主大勝」の見出しが躍るだろう。だが、民主党は単独過半数(241議席以上)を取ることができるだろうか。民主党の現有議席は120に満たないのであるから2倍以上の議席を取らなければならない。「地滑り的勝利」があったにせよ、選挙の常識では「倍以上勝つ」などということは先ずない。

 日本中を驚かせるほど大躍進した東京都議選でも34議席から54議席に増えただけで、倍増からは程遠い。

 民主党へ強い追い風が吹いていることは間違いない。民主党候補の街頭演説には動員もあるが、それ以外の有権者が続々と訪れる。チラシなどで知り足を運んでくるのだ。ある30代の夫婦は「(民主党の)子育て支援が魅力的なので、(候補者が)どんなことを言うか聞きに来た」。

 2人の子供をおぶって来ていた別の夫妻も「子育て支援」に期待を寄せる。妻は「(育児で)お金は出ていくばかりですからねえ」と切実だ。

 年配の有権者は「年金制度を立て直してもらいたい」「後期高齢者(医療制度)はいいことないからね」と口を揃える。

 「年額31万2千円の子供手当てを支給」「月額7万円の最低保障年金を実現」「後期高齢者医療制度を廃止」などと訴える民主党の政策は、高齢者にも若い世代にも高い支持を得ているようだ。

 ところが候補者の演説が始まると期待は不安に変わる。民主党の候補者は新顔とインテリが多い。政策に明るいことを示したいのだろう。まるで大学の講義のような話を始める候補者さえいる。郷土の歴史をひも説き、地域を豊かにする再開発はこうするんですよ、とまで講釈する。

 集まった聴衆は戸惑いを隠せない。上記の夫婦と高齢者に再び聞いた。「なんかピンと来ないですね」「ちょっと難しいですね」という答えが返ってきた。

 戸惑った有権者たちは、それまでは「民主党に入れるぞ」と思っていたにもかかわらず、気持ちが揺らぐようになったはずだ。

 
 もうひとつ不安材料がある。風頼みの選挙運動が長い間の体質となってきたため、陣営は手堅く票をまとめる戦術に長けていない。07年の参院選から小沢代表(当時)が実践指導を重ね風頼みの体質は変わりつつある。だが小沢氏の目が行き届いていない選挙区は相も変わらず“緩い”選挙運動が続いているようだ。

 ある候補の選挙事務所に党本部の最高幹部(小沢代表代行ではない)が訪れた時のことだ。最高幹部は地元議員たちを集めて指示を出していた。「投票日までやるべきことのスケジュールはちゃんと立てているか?」「選挙カーや街宣車の手はずは整っているか?」……。

 傍で聞いていた筆者は吹き出すのを懸命にこらえた。母親が小学生の息子に「ハンカチはちゃんと持った?」「日課表通りに教科書を揃えた?」と聞いているようなものだ。

 この時期になったら「A地区は○千○百票、B校区は○百○十票」という票読みのチェックをしていなければならないはずだ。それも幹部クラスともなれば言外の締め上げをする。『その通りに票を出せよ!』と言わんばかりに。

 有権者の心をつかまない堅苦しい演説と票固めには程遠い陣営の緩い動き。こうした選挙運動を展開していると、ライバル候補と競り合う選挙区では必ずと言ってよいほど「取りこぼし」をする。自民党はこの辺、実に手堅い。「一票一票の足し算」の選挙を伝統として続けてきたからだ。

 民主党が単独過半数を制するか否かは、取りこぼす選挙区をどれだけ少なくするかに架かっている。

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