民主党が政権獲得、風は自民党の失政が起こした

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圧勝に微笑む小沢代表代行(東京・六本木開票センター。撮影:塩田涼)

 午後8時開票速報が始まると同時に民放が出口調査の結果として324人の民主党候補者に「当選予想」を出した。民主党開票センターに設けられた事務方の控えスペースから大きなどよめきが起き、歓声が響いた。開票の結果、予想に近い308議席を獲得。1998年の結党以来、11年目の悲願達成はあまりにもあっけなかった。

 わずか10か月間(細川・羽田政権=93年8月~94年6月)を除いて半世紀余りに渡り政権を維持し続けてきた自民党は下野した。

 民主党は1党で衆院の5分の3以上にあたる議席を獲得した。巨大与党の誕生だが、有権者は民主党に数字が示すほどの圧倒的支持を与えたわけではない。

 失業率が過去最悪を記録し、年金制度は破たんするなど国民生活はガタガタだ。「小泉・竹中改革」による行き過ぎた規制緩和で社会はあちこちで綻んだ。多くの国民がこのままでは生きてゆけないと悲鳴をあげているにもかかわらず、それには耳を貸さず官僚の言いなりの自民党は壊れた社会を全くと言ってよいほど修復できなかった。

 有権者はそんな自民党に業を煮やして「ノー」を突きつけ、その反動で民主党に票を投じただけなのだ。風を吹かしたのは他ならぬ自民党である。「308議席」にアグラをかけば、この4年間の自民党同様、政治を膠着させることになる。

 開票センターでの取材を終えてタクシーで帰路に着いた。規制緩和で台数をやたらと増やされた結果、運転手の収入はガタ減りとなった。30代の若い運転手は「(タクシードライバーに)まだ成ったばかりなんですよ」と話す。勤めていた会社が倒産したのだという。筆者がジャーナリストと分かるや顔をのぞき込むようにして聞いてきた。「民主党に代わって日本は良くなるんですか?」
 「生活が第一」の政治を目指すのなら民主党に課せられた荷は重い。

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