自民両院総会 若手中堅グループは鎮圧、懐柔された

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自民党・両院議員総会。正面は執行部(平河町の党本部で。撮影:塩田涼)

 自民党は意思決定機関である両院議員総会を8日、党本部で開き、総裁選を18日告示、28日投票とし、16日の首班指名は若林正俊両院議員総会長に投票することを決めた。

 衆院選挙の歴史的惨敗で再生が危ぶまれるなか党内刷新を求める声で紛糾するものと予想されていたが、現状改革につながる提案はあっさりと否決された。派閥領袖や執行部の目論見通りの結果となった。

 自民党の旧態依然の象徴とされているのが派閥領袖による党支配だ。これを担保しているのが「総裁選に立候補するには推薦人20名以上を集めなければならない」とする規定である。

 20名の推薦人を得るのは確かに骨が折れる。昨年9月、出馬した石破茂農水相、石原伸晃幹事長代理は森キロウ元首相など派閥のボスに推薦人を回してもらったほどだ。

 これまで幾度も総裁選への出馬を目指したものの推薦人20名を集めきれず立候補を断念している河野太郎衆院議員が規定の見直しを求めた―「これだけ国会議員の人数が減ったのだから20人という数に意味はない。10人としてはいかがか」。

 河野氏の提案は動議となり挙手による採決となったが、手を挙げた議員は20人足らず。あっさりと否決された。人数の少なさには河野氏も驚いていた。「もう少しはあるかと思っていたが」と首を傾げた。

【若手と執行部の間に談合があった】
 テレビカメラの前で自称改革派の若手、中堅議員は「派閥政治を払拭しよう」としきりと訴えていた。にもかかわらず、派閥の力に頼らずに総裁選ができる河野氏の提案に賛成する議員は驚くほど少なかった。これには裏があった。

 両院総会の直前にある若手グループの代表と細田幹事長がすり合わせをしていたのだ。幹事長とすり合わせをしたO衆院議員が親しい記者に話しているのを筆者は側聞した。

 S衆院議員もベテラン記者と二人きりになった際「自民党はガタガタしていると見られると良くないですから(現状追認した)」と語っていた。S議員もテレビカメラに向かって「派閥のボスや首相経験者が動くのはやめてもらいたい」と勇ましかった政治家である。

 ほとんどが裏で事前に決まるこの党の「わかりにくさ」にも有権者は嫌気がさしたのだ。にもかかわらず、改革の旗を掲げなければならないはずの若手がこのありさまである。

 河野氏以外にも改革を唱える議員はいた。だが発言するたびに「必要ない!」の野次があちこちから飛んだ。総裁選の前倒しを求める意見も出なかった。総裁になるわけでもない人物に首班指名で投票することを大多数の賛成で決めた。もはや改革のエネルギーは感じられない。

 歯に衣着せぬ発言が真骨頂の丸山和也参院議員は「現状維持のままになってしまった。改革しようという意志さえない。もうこの党は解党するしかない」と諦めとも憤りともつかぬ表情で語った。

 前出の河野太郎氏は「敗北の総括と検証もないままに総裁選に突き進んでいる。自民党をどんな政党にしたいのか、議論しなければならないのに…」と党への不信感を募らせる。

 スポーツの試合の敗戦でも、明日につながる負け方とそうでない負け方がある。衆院選での自民党の惨敗は、明日の展望さえ見えない大敗北である。しかもなぜ負けたのか総括、検証しようともしていない。

 小選挙区で負け比例復活で命拾いした武部勤元幹事長が記者団に語った言葉が、現在の自民党を象徴している―「自民党が負けたのは君たちが『政権交代』と煽ったからだ・・・」。

 武部氏は、国民の生活に目を向けない自民党政治に有権者が「ノー」を突きつけたことを自覚していないようだ。武部氏ばかりでない。「政権交代」という4文字熟語の責任だと思い込んでいる議員の何と多いことか。このままでは自民党は来夏の参院選も敗北し、破滅へと向かうだろう。

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