麻生太郎前総裁の後継を選ぶ自民党総裁選挙は28日行われ、谷垣禎一・元財務相(64歳)が2位の河野太郎・前法務副大臣(46歳)に大差をつけ第24代総裁に選ばれた。
総裁選の投開票場となる自民党本部ホールは500席だ。党所属の国会議員は衆参合わせても199人しかいない。空席が目立たないように一般党員をゲストとして招き席を埋めた。苦肉の策が、党の凋落ぶりを象徴していた。
衆院選挙で歴史的惨敗を喫した自民党の建て直しがかかった今回の総裁選。全派閥の支持を受けた谷垣氏は「皆でやろうぜ」をキャッチフレーズに「老・壮・青」の団結を訴えた。
「派閥政治の解消なくして自民党の再生なし」が持論の河野氏は、街頭遊説などで森元首相や町村元官房長官を名指しで批判し、世代交代を強く唱えた。
「皆でやろうぜ」は、古い自民党を引き摺る派閥の領袖たちになお活躍してもらおうとも取れる。一方、河野氏が声を大にアピールする世代交代はベテラン排除につながる。
残念ながら谷垣氏、河野氏の主張は共に党再生の本筋ではない。自民党大敗の原因は煎じ詰めて言えば国民生活に目を向けてこなかったからだ。「ベテランのパワーも活かす」いや「長老たちには退いてもらう」の議論で解決できる問題ではない。
総裁選は10日間かけて全国9カ所を回ったが、さっぱり盛り上がらなかった。党員投票率は47パーセントと前回より15ポイントも下回った。
【危機感なき国会議員】
総裁選期間中の9月24日、党本部で青年局、婦人局による公開討論会が行われた。大惨敗を喫したのだから執行部への厳しい批判などが飛び出すものと期待していたが、見事に裏切られた。
3人(西村、河野、谷垣)の候補に「尊敬する政治家は誰か?」と聞いたり、「○×」形式で当り障りのない問題を回答したりと冗漫な討論会となった。まるで忘年会の余興だ。危機感などかけらも感じられなかった。
討論会が終わった後、関西から参加した市議会議員は筆者に「常在戦場じゃない。国会議員は平安貴族と同じだ。地方の自民党はいつ民主党に鞍替えするか分からない」と危機感を募らせた。
国会議員票を35票しか獲得できなかった河野氏が、109票もの地方党員票を獲得したのは、地方の不満の表れだ。
党改革を訴え続けてきた丸山和也参院議員は「党員と国会議員の間にギャップがあり、国民と党員の間にもギャップがある。自民党は皆それに気がついてないんだよ」。
平沢勝栄衆院議員は「みんなでやった結果、衆院選挙であんな惨敗をした。古い自民党を引き摺った人たちがまた出てくるのは、東條英機が『日本を再生します』と言うのと同じ」と斬り捨てた。
批判の矢面に立つ森元首相だが、開票結果を見届けるとそそくさとホールを後にし玄関に出てきた。なじみの古参カメラマンを見つけると右手でVサインを作り会心の笑みを浮かべた。長老支配は温存されたのである。
森キロウ氏、古賀誠氏、青木幹雄氏らが政界を退く頃、自民党は野党第3党か第4党あたりまで転落しているだろう。
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