ドイツ将軍、アフガン誤爆隠匿で辞任~米軍増派にも影響~

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強盗事件が頻発するジャララバード街道をカブールに向かうタンクローリー(アフガン東部のナンガラハール州で。写真=筆者)

 9月、アフガニスタン北部のクンドゥズ州で起きた民間人への誤爆をドイツ国防省が秘匿していたとされる事件で、議会の追及が厳しさを増し、制服組トップと国防省高官が26日、辞任した。

 辞任したのはシュネイダー将軍と国防省高官のピーター・ウィーチャート氏。

 事件の経緯はこうだ―
 9月4日、クンドゥズ州でガソリンを積んだタンクローリーがタリバーンに襲撃され乗っ取られた。同州を管轄するドイツ軍指揮官のジョージ・クレイン大尉は、部隊にタンクローリーへの空爆を命じた。

 「空爆により非戦闘員にも犠牲者が出た」とメディアが報じ、アフガニスタン政府は犠牲者は少なくとも100人、うち30人は非戦闘員と発表した。

これに対してフランツ・ジョセフ・ジャン国防大臣(当時)は議会の追及に「タリバーンを殺害しただけだ」と繰り返していた。

 だが機密文書の存在が明らかになる。「ジャン国防大臣は非戦闘員に犠牲者が出ていたことを知っていた」という内容だ。

 機密文書はさらに衝撃の事実を明かす――空爆の数時間後、クンドゥズ駐留のドイツ軍部隊に病院から「(誤爆された)市民を治療している」との連絡があった、というのだ。

 ジャン前国防大臣は「(制服トップの)シュネイダー将軍から報告を受け議会にはすべて話している」と主張する。だが議会で証言している内容と、機密文書が明らかにしている事実は正反対だ。

 情報の流れは「駐留部隊→本国の軍・国防省→国防大臣」となる。どの段階で誰かがウソをついている。あるいは機密文書がウソで塗り固められているか。

 制服組トップの将軍と国防省の高官の辞任は、少なくとも機密文書がデタラメではないことを示しているようだ。

 ドイツ議会は増派を認めるか否かを審議している最中だ。またアフガン駐留をさらに一年延期することについての正式承認を来月に控える。アフガン戦争で重要な位置を占めるドイツ軍の動向は予断を許さない状態だ。

 ドイツ軍はアフガニスタンに4千300人を駐留させており、部隊規模は米、英に続いて3番目に大きい。ドイツ軍が増派を見送る事態となれば、来週早々にも正式発表が予定されている米軍の増派にも影響を与えそうだ。

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