鳩山首相、「対等な日米関係」諦める

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9月初旬ルース駐日大使との初会談。この頃は「対等な日米関係」と意気込んでいたが…(民主党本部、写真=筆者撮影)

 政治評論家の屋山太郎氏が「ナマコみたい」と評していたが、ナマコも驚くほどつかみどころがなかった――
 鳩山首相は16日、旧民主党時代から掲げてきた「常時駐留なき日米安保構想」について「現実に総理という立場になった中で、その考え方はやはり封印しなければならないと思っている」と記者団に語った。

 有体にいえば“米軍基地は温存する”ということだ。世界最強の軍隊を用心棒として置く。それも一つの安全保障のあり方だ。筆者は別に反対するものではない。

 ただ鳩山政権が「対等な日米同盟」を謳う以上、話は違ってくる。安全保障は同盟関係の基盤だ。首都のど真ん中(六本木)に基地を置かせ、軍用機が墜落しても警察は手を出せず、犯罪を冒した兵士もなかなか引き渡してもらえない。平等でないことは中学生にも分かる。

 普天間基地の移設をめぐっても首相の発言はコロコロ変わった。「私が近く決める」と決意表明していたはずが、決めたのは“先送り”だった。

 先月26日、普天間基地を抱える宜野湾市の伊波洋一市長が官邸で鳩山首相に会った。伊波市長は渡米して入手したグアムを海兵隊の拠点にする米軍の計画資料を首相に示した。忙しい国会の合間を縫って伊波市長を首相に会わせ、グアムへの全面移転の流れを作りかけていた、ある民主党議員事務所は、今回の“先送り”に落胆を隠さない。

 この議員は沖縄が選挙区ではないが、「常時駐留なき日米安保」の信念で鳩山氏が基地問題に取り組んでいるものと、すっかり思っていた。ところが鳩山首相本人がその信念を「封印」すると言い出したのだ。「国外移転は諦めた」との前ぶれとも取れる。

 「子供手当の所得制限」もそうだが、鳩山氏は前言を簡単にひるがえす。言葉が軽過ぎるのである。重要な問題は自分では決断できない。漢字は読めるし記者への対応は丁寧だが、指導者として肝心な部分が麻生前首相と日増しに似てきたように思えてならない。

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