世界の火薬庫とも言われる中東問題に精通した国会議員が誕生した。7月の参院選・埼玉選挙区に民主党から立候補、当選を果たした前中東調査会・上席研究員の大野元裕氏だ。在バグダッド日本大使館員だった大野氏は湾岸危機(1990年)の際、「人間の盾」になるなどしてイラクに閉じ込められた邦人200人を救出したことで知られる。
選挙戦で幾度も応援に入った岡田外相は「(大野氏の)知識と経験を活用したい」(20日、定例記者会見)と期待を寄せる。アメリカ一極主義が崩れた今、日本政府の中東政策はどうあるべきかなどを大野議員に聞いた。
2回目のきょうは――
<世界の関心を失ったイラク―希望は石油があること>
Q:真っ先駆けて米国に追随した日本は、今後イラクの復興にどう貢献すべきでしょうか。
A:問題は社会と経済。(日本は)そういったマネジメントに関わる必要がある。しかしニワトリが先かタマゴが先かではないが、安定した国家ができるのが先なのか、それを支える社会構造ができるのが先なのか。
日本が治安分野で安定した国家作りに貢献できる分野は小さい。それよりも経済や社会といった間接的なものに手を加える分野が大きい。今は様子見だと思う。
Q:金銭的援助はムダでしょうか?
A:日本はイラクに対する戦略的関心がない。石油とか戦術的なところには出ていますけど。
日本のイラクに対する支援は2004年時点の想定で2008年まで進められた。2003年に1億ドルを緊急援助で払った。これはテントだとか医薬品に使った。
2004年から5年間で50億ドル払った。最初は15億ドルを無償供与した。この後の35億ドルは円借款が中心。計画を作ってダムを作りましょう、道路を作りましょう、社会基盤を整備しましょう、石油産業を育成しましょうという金だった。
しかしこれが終わる2008年までにイラクは安定しなかった。日本は2004年初頭に決めたこの計画を見直すことなしにお金を払うことだけを優先してしまった。結果としてドブに捨てた金も多いと思う。
緊急支援してお金を差し上げればイラク自体に冨があるから後は2本足で歩く(自立する)だろうと考えた。2004年の幻想を引きずったのだ。
これが終わった後にアメリカも含めてイラクに対する関心がなくなった。オバマ政権でいえば関心がアフガニスタンに移った。
日本もイラクには関心がないという状況のなかで、今さら掘り起こして戦略的な関心に高めようというインセンティブもない。それが現状。
Q:どっちに転んでもイラクは失敗国家になりそうですが・・・
A:希望は石油があること。皆、石油には関心がある。石油を握った者が勝つ。そこはひとつ救い。
(しかしイラクの各勢力は)解決のカギ(石油)が圧倒的な力をもたらすゆえに誰にもこれを握らせたくない。
~つづく~
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