世界の火薬庫とも言われる中東問題に精通した国会議員が誕生した。7月の参院選・埼玉選挙区に民主党から立候補、当選を果たした前中東調査会・上席研究員の大野元裕氏だ。在バグダッド日本大使館員だった大野氏は湾岸危機(1990年)の際、「人間の盾」になるなどしてイラクに閉じ込められた邦人200人を救出したことで知られる。
選挙戦で幾度も応援に入った岡田外相は「(大野氏の)知識と経験を活用したい」(20日、定例記者会見)と期待を寄せる。アメリカ一極主義が崩れた今、日本政府の中東政策はどうあるべきかなどを大野議員に聞いた。
3回目のきょうは――
<『アメリカ一極主義』なき時代の中東政策とは>
Q:日本政府の対中東政策はどうあるべきでしょうか?
A:今までの日本の対中東政策にはアメリカの対中東政策が関与する割合がとても大きかった。特に70年代以降のパレスチナ・イスラエル関係。
それからもうひとつは90年代以降のアメリカ一極主義、あるいはアメリカの一極主義に支えられた国連中心の対中東政策がとても大きかった。
ところがアメリカの国力が下がるなかでアメリカの古典的な覇権主義も機能しない。一極主義がなくなると混沌の時代に入る。
そうすると「アメリカをバネにした国際社会の秩序」云々とか昔、言っていたものに乗っていた日本の中東政策もおのずと変わらなければならない。
つまり中東と日本のバイ(二国間)の利益はどうなるか。あるいは不利益になることをマルチ(多国間)でカバーするのかだ。
イラクのような産油国で中央をつかむのは誰か。これが見えた時に日本は参画することがバイの利益になる。あるいはスーダンのようなどう見ても日本には輸入しないような産油国やイランの資源をどう考えるか。
<二国間・多国間のふたつの軸とパワーバランス>
例えば天然ガスという資源がある。ロシアとカタールとイランで世界の埋蔵量の6割を占める。
ところがイランはガスを輸出できない。それがロシアのヨーロッパに対する発言権につながっている。ロシアのように大量にヨーロッパに天然ガスを出せるのはイランしかいない。イランが封じ込められている限りロシアはでかい顔をしていられる。
つまりこういったパワーバランスのなかで日本がどの国を封じ込めたいか、どの国に発言権を持たせたくないか。たとえばロシアだとか中国の脅威を封じ込めたいのであれば、ロシアの得意なところであるガスとか、中国のアキレス腱である石油とか、こういったものをマルチ(多国間)で押さえ込もうとするのか。(バイとマルチの)ふたつの軸で考えていった方がいい。
そこから考えていけばイランにはこう対処する、イラクにはこうしたほうがいい、アフガニスタンにはこうした利益がある。ソマリア沖の海賊にはこう対処したほうがいいい。パレスチナ問題はこう・・・(中東それぞれの国に対して二国間、多国間の枠組みの中で政策を決めていく)、こういったやり方を考えていくべきだと思う。
もともとの(アメリカ一極主義という)グランドセオリーがなくなっちゃったわけですから。
~終わり~
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