リクルート姿の学生たちは荒縄で体をしばりつけた。「就活したらブラック企業だった」のプラカードも。＝23日午後、新宿。写真：田中撮影＝
就職できない、できても非正規やブラック企業だったりする。「氷河期」などという表現では済まされないのが、大学生の就職事情だ。
大学生の就職率は63・9％（文科省調べ、2012年8月速報値）。うち3・9％は非正規社員だ。就職浪人は4万9,441人にものぼる。大学教員の知人によれば、大学の就職率をあげるためにブラック企業だと分かっていても斡旋するという。
就活に強い疑問を抱く現役大学生やブラック企業に就職した元大学生たちが「勤労感謝の日」のきょう、新宿でデモ行進した。名付けて「就活ぶっ壊せデモ」。首都圏からの参加者がほとんどだったが、福岡から駆け付けた学生もいた。九州大学の女子大生だ。
彼女は遠い九州から参加したわけを話してくれた―「知り合いの先輩が就職に失敗して自殺した。失敗しても絶望しない社会になるよう、皆が（就職事情について）理解を深めてほしい」。
都内の元学生（25歳・女性）は3年前、就活が実って上場企業に入社できたものの待っていたのは苛酷な勤務だった。飲食チェーン店で朝6時30分から夜11時30分まで拘束され、パワハラにも苦しめられた。2年半勤めたが、体調に変調を来し、うつ病になった。現在は休職中だ。
就職活動に差支えがあると思い尻込みしたのか。現役学生の参加者は思ったより少なかった。＝写真：諏訪撮影＝
東京の大学を卒業した男性（23歳）は「水処理関係」の会社に就職したが、勤務先は浜岡原発だった。発電所の中での作業もあるという。「（被曝の）恐怖はあるが、次の仕事があるか分からないので、もう１～２年は今の会社で働かなくてはならない」。男性は辛そうに話した。
リクルートスーツに身を包んだ参加者たちは荒縄で体を巻きつけた。「学生は就活に縛られている」という意味だ。
デモが始まると間もなくドシャ降りとなった。学生の就活戦線を象徴するような空もようだ。「大学は就職予備校じゃないぞ」「私たちは就活の奴隷じゃないぞ」…雨空にくぐもったシュプレヒコールが響いた。
《文・田中龍作／諏訪都》
