5月1日、新聞・テレビは『連合』など大労組のメーデーばかりを取り上げる。雇用者人口の35・7%をも占める非正規労働者(総務省統計局調べ)のことは知らぬかのように。
民主党が09年の総選挙で目玉に掲げていた派遣法の改正は骨抜きにされた。マニフェストを具体化した政策インデックスに謳っていた「製造業への派遣禁止」「登録型派遣の禁止」は自民党と公明党の反対で見送られた。
職と住居を一挙に失い数万人の非正規労働者が路頭に迷ったリーマンショック(08年)は、いつ再現されてもおかしくないのである。
実態は悪化するばかりだ。派遣法の骨抜きもあり、正規労働者は前年同期比で54万人減り、非正規労働者は34万人も増えた(平成23年10月~12月期=総務省統計局)。
厚労省の調査によると、非正規労働者の収入は正規労働者の63%にしか過ぎない。大企業では56%と格差は広がる一方だ。
『連合』など大労組のメーデーしか伝えないマスコミは、国民生活に目を向けることを忘れたのだろうか。
「最賃(最低賃金)ギリギリのところに張り付いて生活している」。ある派遣労働者(42歳・男性=練馬区在住)は投げやりに話す。男性は100円ショップのおにぎりが半額になる夕方を待って買う。
メーデーが挟まるゴールデンウィークは、非正規労働者にとって地獄である。期間中、オフィスワークやオフィス周りの配送や清掃は休みだ。「日給月給」だから当然収入は激減する。
「長過ぎるほどの日数、仕事の受注が途絶える連休を呪っている」。フリー編集者の女性(50代・都内在住)は嘆いた。マスコミがゴールデンウィークの風物詩として報道する成田空港の出・帰国ラッシュは、非正規労働者には夢のような世界なのである。
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