相撲協会の不祥事が明るみに出る度に、同じテレビ番組で一緒に仕事をした元関脇を思い出す。身長190センチ余りの恵まれた体躯とずば抜けた身体能力で将来を嘱望されていた。
番組が終わった後の宴席でお天気担当の女性キャスターが無邪気にも質問した。「○関はどうして横綱にならなかったんですか?」
元関脇は「お金がなかったから」と意味ありげな笑みを浮かべた。勝ち星は金で買えるということを十分に伺わせるものだった。最大の収入源はタニマチからの金、ということだった。
元関脇は金にまつわる話を続けた。「年寄り株を買えるか買えないかは、タニマチとの付き合い方しだいですよ。要領のいい人(力士)は一晩に2回の付き合いをこなしますからね。相撲は強くなかったのにタニマチと上手に付き合い、今は年寄りになっている人がいますからね」。
勝ち星も年寄り株も金次第なのだ。出世も余生もタニマチとの付き合いが左右するのである。「ゴッツァン体質」に染まる土壌が角界にある。そこには「頂いて良いのか、頂いてはいけない金なのか」の区別もモラルもない。
タニマチには(政権交代前の)大物政治家が名を連ね、横審の委員長はマスコミ界のドンの指定席だった。大物政治家は不祥事をもみ消すなど朝メシ前である。警察署長か本庁の課長に電話一本入れれば済むだけのことだ。マスコミ界のボスは不祥事を鶴のひと声で報道させない。
自民党政権下、極端に言えば相撲協会は何をやっても許されてきた。八百長や暴力団との付き合いなどを時たま週刊誌が報じるが、火の手は全く大きくならなかった。いつもボヤでもみ消されていたのだった。
元関脇は芸能界に転身したが上手く行かず、郷里に帰ってチャンコ料理店を開業した。だがこの不況でチャンコも厳しいようだ。
そういえばテレビ局の控え室に貴闘力(大嶽親方)が元関脇を訪ねてきていた。もう10年も前のことだ。元関脇の弟弟子の時津海(時津風親方)と貴闘力(大嶽親方)は、野球賭博に手を染めていたとして一緒に名前が出てきた間柄だ。その頃から手が合って(仲良し)いたのだろう。
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瓦礫の広域処理で北九州に飛び、大飯原発の再稼働で福井に行き、そして東電の刑事告訴で福島に……『田中龍作ジャーナル』は、現場主義が信条ですが、取材には、思わぬほど費用がかかります。
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