少数民族タミル人の武装勢力LTTEと政府軍が26年間に渡って戦ってきたスリランカ内戦が終結して5ヶ月が経つ。「民間人に紛れ込んだLTTEの再結集を防ぐため」との理由でスリランカ政府が設けた難民キャンプにはタミル人25万人が強制収用されたままだ。
人道上の見地から国連は改善を促しているが、スリランカ政府は応じる姿勢を示さない。ジャーナリストや人権団体も近づくことが許されない難民キャンプの人々の治療にあたった日本人医師がこのほど帰国、惨状を明らかにした。
久留宮隆医師(1959年生まれ・外科医)は、スリランカ北部のワウニア(地図参照)に設けられた「マニックファーム難民キャンプ」傍の病院で8月下旬から6週間にわたって診療を続けてきた。以下、久留宮医師の話を記す――
病院のスタッフは内科医7~8名、外科医2名、麻酔医2名、看護士10数名。難民キャンプの一角が見えるほどの所にあるのだが、アクセスは制限されている。朝、キャンプ内の診療所に並び、医療が必要であると判断された人が、バスなどに乗せられて病院に来る。着くのは夕方。
1日の患者数は外科に40~50人、内科に30人位。外科手術は1日、10例から14~15例でほとんどは爆弾の破片を体内から除去する手術だった。久留宮医師も毎日のようにメスを握った。
(内戦の最終局面で人間の楯とされていたことやキャンプ内の衛生事情などを考えると)医療ニーズはもっとあるはずだ。かなりの数がネグレクトされているのではないだろうか。
人間の楯で砲弾の破片を浴びた人の割合は、キャンプ収容者全体の数十パ-セントに上るものと見られる。(上水と下水の区別がない劣悪な衛生事情も手伝い)内科は髄膜炎、マラリアなどの感染症が主だった。(人口密度の極めて高い)キャンプで発症しているということを考えると、患者はもっと多いはずだ。それも重症患者が。だが、病院に来たのは軽症患者だったという印象が強い。
9月26日、軍が収容者に発砲し、子供が負傷する事件が起きた。久留宮医師はそれを知らされておらず、「銃で撃たれた人が来た」と言われて手術にあたった。負傷したのは女の子(4歳)と男の子(6歳)だった。男の子は軽症だったが、女の子は銃弾が左胸から背骨を貫通して右胸に抜けていた。何とか一命は取りとめたが、下半身マヒが残った。
狭い所に閉じ込められて移動の自由を禁止されたことへの不満からイザコザが起き、軍が発砲、流れ弾が2人の子供に当ったということだった。
ーー久留宮医師の話はここまでーー
キャンプ収容者25万人のうち16万人についてはLTTEではないとするスクリ-ニングが済んだ、とされている。スリランカ政府にはこれらの人々を拘束する正当な理由はない。
スリランカは11月には雨期に入る。スクリーニングが済んでいない収容者も含めて適切な場所に移動させなければ、「第2次災害」が発生する。ODA最大供与国の日本政府は、難民の早期帰還をスリランカ政府に働きかけるべきだ。
-
瓦礫の広域処理で北九州に飛び、大飯原発の再稼働で福井に行き、そして東電の刑事告訴で福島に……『田中龍作ジャーナル』は、現場主義が信条ですが、取材には、思わぬほど費用がかかります。
今、何が起きているのかを伝えるためには、どうしても現場に行く必要があります。重大事でありながら新聞・テレビが報道しない出来事があまりに多すぎる昨今です。
財政難にあえぎ広告を入れようか、メルマガを導入しようかと考えたこともありました。だが、記事のスタンスと矛盾する企業が広告に登場することもあります。メルマガは一人でも多くの方々に記事をお読み頂きたい、という趣旨には合いません。
これまで以上に『田中龍作ジャーナル』を充実させて、ご支援くださる方の輪を広げるしかないことにあらためて気付いたしだいです。田中龍作の現場からの発信に何卒お力をお貸し下さい。2012年6月12日
田中龍作■郵便局から振込みの場合
口座: ゆうちょ銀行
記号/10180 番号/62056751■郵便振替口座
口座記号番号/00170‐0‐306911
■銀行から振込みの場合
口座/ゆうちょ銀行
店名/ゼロイチハチ・0一八(「ゆうちょ銀行」→「支店名」を読み出して『セ』を打って下さい)
店番/018 預金種目/普通預金 口座番号/6205675 口座名/『田中龍作の取材活動支援基金』■ご足労をおかけしない為に
ゆうちょ銀行間で口座引き落としができます。一度窓口でお手続きして頂ければ、ATMに並んで頂く手間が省けます。印鑑と通帳をお持ち下さい。
記号/10180
番号/62056751
口座名/タナカリュウサクノシュザイカツドウシエンキキン連絡先
Twitter
API制限に伴い、Twitterの表示を一時的に停止しております。