野田首相、渋谷で演説 聴衆からヤジ・拍手まばら 

野田首相に向けてヤジを飛ばす男性(右端)。=7日、渋谷ハチ公前。写真:諏訪撮影=

野田首相に向けてヤジを飛ばす男性(右端)。=7日、渋谷ハチ公前。写真:諏訪撮影=

 壊滅的敗北が避けられない民主党の野田佳彦代表(首相)はきょう、東京都心の4選挙区に入り同僚議員の応援演説をした。若者とサラリーマンの街、渋谷での演説のもようを取材した。

 「自民、過半数獲得か」。マスコミの世論調査を意識した野田首相は、自民党の批判に力点を置いた―「公共事業の大盤振る舞いを幾度もやったが、景気は回復しなかった。日本銀行の輪転機をグルグル回してお札を刷っても景気はよくならない」。

 一方で民主党政権の数少ない実績である「高校教育無償化」「子供手当の拡充」などを自画自賛した。主婦層に不人気の消費税増税には触れなかった。原発については詐欺まがいの「脱原発」をたった一言披露した。

 「30年代に原発をゼロにする。再生エネルギーを創造する」。これだけだ。

 黒山の人だかりが出来ていたハチ公前の会場からヤジが飛んだ。「再稼働反対」「放射能止めろ」……

 ヤジの主は渋谷区のオフィスから仕事を抜け出して演説を聴きに来た男性3人組(30、40、50代)だ。

 うち40代に聞いた。「(野田首相は)話は上手だが、ちゃんと聞くと他党を批判しているだけ。原発は再稼働しているし(事実上)新増設している。約束を守らないのは目に見えている…(中略)自分のヤジで野田がビクッとなった。効果があったのかな」。男性は民主党が嫌いでたまらないと云った様子だった。

選挙で大惨敗は確実だからか。野田首相の目は虚ろだった。=写真:島崎ろでぃ撮影=

選挙で大惨敗は確実だからか。野田首相の目は虚ろだった。=写真:島崎ろでぃ撮影=

 通りがかりの会社員(50代・男性)は、選挙情勢を伝える新聞報道への不信感を隠さなかった。「自民党が過半数なんてあり得るのか?マスコミは一部の権力者のための世論誘導をしている」。

 男性はもちろん民主党の政策も批判した。「消費税は今やるべきではない。ムダを絞るだけ絞った後でやるべきだ。原発の再稼働も間違っている。夏の電力不足はデッチあげだった」。(首相到着前にインタビュー)

 首相の演説が終わるや男性は「全く心に響かなかった」と言ってハチ公前を後にした。聴衆からの拍手もまばら。野田首相に人並みの感覚があれば、師走の冷たい風がいっそう身に沁みたはずだ。

  《文・田中龍作 / 諏訪都》

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