記者クラブ報道が「無駄な巨額援助」増やす

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新聞・テレビの報道は現地の生活実感に乏しい。外務省発表を優先しがちだ(カブールの繁華街。写真:筆者撮影)

 8日付の拙稿『解放の常岡氏、カルザイ政権の腐敗を語る』に対して、読者から次のようなツィートを頂いた―「すでに諸外国のジャーナリスト達は指摘していた。目新しいことではない。日本のマスコミや外務省が無視していただけ」。

 まさにその通りだ。半世紀余りに渡って対米追従一辺倒を続けてきた外務省と、役所の発表にどっぷり漬かった記者クラブメディアの報道姿勢がそうさせてきたのである。

 各省庁のクラブ詰め記者は、当局からのレクチャーづけとなる。レクチャーされた案件はすべてではないが記事にしなければならない。翌朝の各紙に掲載されているのに、自分だけが書いていないとなると不名誉な「特オチ」となる。特オチが2度も3度も続く記者は左遷される。

 記者たちは当局発表ネタの原稿執筆に追われる。出稿される原稿は役所発表なので編集局にとっても安心だ。デスクも「埋め草」欲しさで原稿を採用する。かくして当局発表ものが紙面の7割を占めることになる。

 外報部の遊軍記者がアフガンからの現地ルポを出すことが稀にある。だが露骨なカルザイ政権批判はほとんど見られない。外務省が発表する「日本政府の対アフガン援助の方」が読者の印象に残ることになる。

【外務省は現地の腐敗を知るも】
 日本外務省の在外公館は諜報活動こそしないが、遜色のない情報収集は行っている。イスラム原理主義の国に赴任していたあるキャリア外交官の話が興味深い――「(イスラム原理主義の国では飲酒はご法度なので)現地ジャーナリストたちを自宅に呼んでビールやウィスキーをふるまう。彼らは大喜びだ。酔った勢いもあってペラペラとしゃべる。こうして彼らから聞き出したことはすぐに公電に起こす」。もちろんフィルターにかけた上でのことだ。

 在外公館は現地情勢についてかなりの所まで知っている。カルザイ大統領の実弟が麻薬王であることなどは初歩だ。日本人以外の誘拐事案についても、どの勢力にどれ位お金を払ったか、救出されたのか失敗したのかなど詳細に把握している。

 外務省の各地域担当課は「●●国や●●国には何百億円、何千億円つぎ込もうが、復興には役立たない。ドブに大金を捨てるようなもの」ということを知り抜いているのである。●●●共和国の日本大使館に勤務していたある専門調査員は筆者に「ドブに捨てた」と明かした。

 ところがこうした裏情報は記者会見で発表されない。政府当局が公に明らかにしたとなると外交関係を損ねるからだ。

 記者たちが自分の足で情報をつかみ「○○であることが□□新聞の取材で分かった」と報道すれば、外交問題にはならない。カルザイ政権の腐敗した実態を克明に報道すれば、無駄な巨額資金援助に「待った」を掛けることもできるのである。

 外務省はアフガンから撤退する米国の穴埋めとして巨額資金援助の必要性を強調する。無駄であることを知りながら米国のために尽くすのである。報道機関が発表ネタ優先主義(官報)から抜け出さない限り、国益を損ない続ける。


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