【スリランカ・トリンコマレ発】 トリンコマレ県は、シンハラ人(仏教)、タミール人(ヒンズー教)、ムスリムが混在する。政府軍の支配地域だ。ジャフナのようにヒンズー教の寺院は目につかない。パゴダ(仏舎利塔)が存在を誇示するかのように尖塔を空に向かって突き出している。
同県では津波により1070人が死亡、8万1597人が家を失った。シンハラ人、タミール人、ムスリムはそれぞれ村ごとに分かれて住んでいるので、避難所も3者別々となる。
スリランカは、人口の74%を占めるシンハラ人がタミール人(同18%)とムスリム(同7%)などを支配する国だ。83年から20年にわたって、シンハラ人が握る政府軍とタミール・タイガー(タミール人の反政府武装組織)との間で、内戦が繰り広げられてきた。ノルウェーの仲介で2002年から(一時)停戦している。「撃ちかた止め」の状態だけだから、国内の緊張は継続中だ。
シンハラ人地区(仏教)のサムグラガーマ村を訪ねた。家を失った人々は、村の公民館を避難所にあてている。現在、約300家族がここで生活する。スリランカ国旗がはためく敷地の周りは鉄条網が張られ、政府軍が厳重に警備する。
詰所となる軍用テントさえ設けられ、公民館にはそぐわないものものしい雰囲気だ。津波の2ヶ月前、シンハラ人の政治指導者がタミール・タイガーの旗を焼く事件がトリンコマレ県で起きたからだ。死者は出なかったもののタミール人とシンハラ人は双方デモを掛け合い、政府軍が鎮圧したほどだった。
10キロほど南に離れたサリ村では、タミール人625家族が避難生活をしている。こちらはビニールテント暮らしだ。テントの中は蒸し風呂のように暑い。ただでさえ赤道にほど近いスリランカだ。スリランカで活動を続ける日本のNGO「日本紛争予防センター」が、1月29日から仮設住宅の建設を始めた。
タミール人は内戦中、戦闘で3回も4回も住み慣れた家と土地を追われた。停戦合意(02年)し、安住への希望が見えかけた矢先の津波災害だった。サリ村避難所警備にあたる政府軍の兵士はわずか2人だった。
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