【ガザからの便り】トンネル爆破、エジプトの苦しい言い訳

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トンネルはいつ攻撃されるか予測がつかない。掘削作業は命がけだ(ガザ-エジプト国境の街ラファで。撮影:筆者)

 ガザの友人から便り(メール)が届いた。イスラエル軍による封鎖が続くガザに生活物資などを搬入する地下トンネルにエジプト治安部隊が(28日)、毒ガスを流し込んだうえで爆破、5人が死亡した。5人はいずれも妻帯者で大勢の家族を養わねばならず、エジプトと結ぶトンネルで運び屋として働くことで賃金を得ていた。5人とも他に仕事がなかったため危険なトンネルで働くしかなかった。エジプト政府からはトンネルを爆破するとの警告はなかった。――要約するとこのような内容だった。

 アル・ジャジーラWeb版によれば、エジプト治安部隊は今年1月ごろから2~3週間に一度の頻度でトンネルを爆破しており、犠牲者は40人以上にのぼる。

 イスラム原理主義組織ハマスは「エジプト治安部隊が毒ガスを送り込んだ」との声明を出した。アル・ジャジーラはエジプト政府当局者の話として「爆破前に警告した」と伝えている。

 同当局者はAP通信に対して「(エジプト側の)トンネル入り口を塞ぐための爆破はルーティンワークとして行っている」と述べ、定期的に爆破していることを認めた。毒ガスについては「爆破の際発生する炎が酸素を吸収した」として酸欠死であるとの見方を示した。

 毒ガスの使用は否定したが、イスラム同胞への攻撃は動かし難い事実だ。苦しい言い訳とも取れる。エジプトは中東諸国では数少ない親米国家でイスラエルとも和平条約を結んでいる。

 筆者は現地を見てきたが、エジプトとの間を結ぶ地下トンネルは国境フェンスのすぐそばから掘られている。トンネル業者によればトンネルの数は全部で約1,500本にものぼる。約20メートルの深さから真横に伸びており、長いものは800メートル、短いもので400メートル。

 トンネルは食糧、医薬品、日用雑貨など生活必需品を供給するのに欠かせないルートだ。イスラエル側、エジプト側の国境と海上が軍事封鎖されているガザの人々にとって、エジプトにつながる地下トンネルはまさに命脈である。

 イスラエルは、ハマスが全トンネルのうち400~600本を運営しているものと見ている。ハマスを支援するイランなどから武器や弾薬なども運び込まれてくるものと見て神経を尖す。イスラエル空軍がガザ側のトンネル入り口を時折空爆するのはこのためだ。

 ベトナム戦争では地下トンネルの「ホーチミンルート」を通じて武器弾薬が供給された。世界最強の米軍と粘り強く戦った解放戦線の命脈だったのである。

 ガザも同様だ。エジプトやイスラエルが破壊しても、彼らはまた新しいトンネルを掘るだろう。

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