「首相の安全保障無策」 全国知事会で批判噴出

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鳩山政権の「基地政策」に不信感を露わにする仲井真・沖縄県知事(都道府県会館で。撮影:筆者)

 鳩山首相は27日、普天間基地の移設をめぐって全国の都道府県知事に米軍訓練基地の受け入れを求めたが、知事らは一斉に反発した。

 全国知事会議は鳩山首相自らが開催を要請した。首相の要請で全国知事会議が開かれるのは極めて異例。一国の総理に対するものとは思えないほどの厳しい意見が相次いだ。

 首相は韓国哨戒艇が北朝鮮の魚雷を受けて沈没した事件をあげて「アジア全般の平和を築いていくためにも日米同盟は極めて重要。(中略)…抑止力を現時点において維持していかなくてはならない」。

 高校生を騙すような御託を連ねたあげく首相は知事らに懇願した。「ぜひ日本の安全保障もためにも皆様方の故郷で『ここだったら(米軍基地を)受け入れられるぞ』という所があったら、国民の御願いとして申し上げたい」。

 “何をいまさら”という表情で沖縄県の仲井真弘多知事が発言した。仲井真知事は米兵による事件・事故が毎月平均26件も発生していることを先ず説明し、次のように話した。

 「我々が日本国民として負うべき応分の負担をはるかに超えている。これを減らしてもらいたい。(中略)…普天間はV字型に決まりかけていたのが、また戻ってくる。(それは)極めて厳しく極め遺憾ということを(23日に来沖した)総理に申し上げた」。

 仲井真知事が口火を切ると、鳩山政権の安全保障政策に関する無策を批判する意見が噴出した――
 「総理は指揮官として安全保障というものをどう考えているのか。それが分からないことには私たちも協力のしようがない」(神奈川県・松沢成文知事)
 「アメリカがマリーン(海兵隊)も含めて日本を守ってくれるのか、(総理を指差しながら)あなた方は確かめてもらいたい」(東京都・石原慎太郎知事)
 「(我々)自治体に御願いするのであれば安全・安心の理念を示してほしい」(広島県・湯崎英彦知事)

 受け入れ拒否一色のなか、大阪府の橋下徹知事だけが前向きの姿勢を示した。「大阪府民は沖縄の基地負担にただ乗りしている。できる限りのことをしたい」。関西空港で米軍の訓練を受け入れることにより巨額の赤字を解消しようという橋下知事の下心ものぞく。

 首相は、知事らのまるで艦砲射撃のような批判を黙々とノートに書き留めた。首相が退席した後、「普天間基地の移設及び沖縄県の負担軽減について」と題する知事会声明の文面が検討された。そこでも首相の安全保障政策のお粗末さに対する批判が止まらなかった―ー
 「抑止力が本当に機能しているか、(首相の)今の説明では分からなかった。本人が分からないものを県民に押し付けるわけにはいかない」(新潟県・泉田裕彦知事)
 「今日のあの話で日本の安全保障はどうあるべきか、何ら議論していないのに、感覚的なものだけでは辛いものがある」(富山県・石井隆一知事)

 全国知事会の麻生渡会長(福岡県知事)の総括が現状をよく表していた。「(普天間移設は)蛇行した。そして沖縄の人々を傷つけた。政府は一貫した立場でやるべきということを強調したい」。

 「辺野古沖」「訓練基地の一部を徳之島に移設する」と明記する日米合意の共同発表を翌日に控えての全国知事会招集だった。知事らに米軍基地の受け入れを頼むには、あまりに遅すぎたと言わざるをえない。2学期が始まる前日に夏休みの宿題に着手した小学生に等しい。

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