築地でドブ板の小沢氏、有楽町で世論に訴える菅氏

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「築地市場を考える会」総務役員の山崎康弘氏(中央・ブルーのシャツに白いハチ巻き)に案内され築地を歩く小沢氏=11日、築地場外市場。写真:筆者撮影=

 小まめに歩いて支持者を固める小沢陣営と新聞・テレビを味方につけて世論に訴える菅陣営。最後の週末となった11日、小沢前幹事長は築地を訪れ、菅首相は有楽町で街頭演説した。

 小沢氏が築地を選んだのは、東京の台所を訪問することで「国民の生活が第一」を実現できるのは自分であることをアピールするためだ。築地市場は石原都知事が強行しようとしている豊洲への移転で揺れている。豊洲への移転に反対する「築地市場を考える会」の仲卸業者らが、移転阻止を小沢氏に陳情しようと出迎えた。

小沢氏が場外市場の狭い路地を歩くと、商店主らから「小沢さん、(豊洲への)移転は止めさせてくれよな!」などと声が飛んだ。セリで鍛えた声は野太く迫力がある。

 「築地市場を考える会」総務役員の山崎康弘氏が小沢氏を道案内した。山崎氏は「小沢さんは築地の移転問題について良く勉強していた」と目を丸くする。小沢氏は「(移転は)無理と無駄が多過ぎる。行政(東京都)の発表する数値がコロコロ変わっただろ。あれは良くないよなあ」と話しかけてきた、という。

 東京都は東京ガス跡地の豊洲予定地について、地中の毒性を過小発表し、ズサンな計測をするなどしていた。環境団体からそれを指摘される度に公表数値を訂正していたのである。

 マグロの仲卸業者に「菅さんと小沢さんのどちらを支持するか?」と尋ねた。「菅さんも『移転反対』を表明しているけど、築地にはまだ足を運んでくれていない。小沢さんだったら剛腕で止めてくれそう」と答えが返ってきた。

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蓮舫行革担当相や長妻厚労相らと共に街頭演説する菅首相(11日、JR有楽町駅前。写真:筆者撮影)

 平日、公務で多忙の菅首相は、有楽町で蓮舫行革担当相、長妻厚労相らを伴って街頭演説した。「官僚の言いなり」との批判があることを意識してか、事業仕分けの成果を強調し「これこそ政治主導」と訴えた。

 足を止め演説に耳を傾ける人たちに聞いた――
 
 「菅さんはリーダーとしてはどうかな?かといって小沢さんが素晴らしいとは言えないし。もし投票権があったら最後の最後まで迷うだろうなあ」。(40代男性・神奈川県在住)
 「菅さん支持。もたついているのが心配」(60代女性・江戸川区在住)
 「菅さんはクリーン、小沢さんは金権。民主党の原点に戻らなくてはならない。どういう方向に国を持って行くのか、菅さんは頼りない。ビジョンを持たなくちゃ」(70代男性・神奈川県在住)
 「菅さんは誠実、小沢さんは政治とカネ。この世の中誰がやっても同じかもしれないけど、総理がしょっちゅう変わるのはよくない」(70代女性・都内在住)
 「菅さん支持。菅さんは政策に弱いけど官僚の言いなりだから、国がガタガタになることはない」(30代男性・都内在住)
 「どちらかと言えば菅さん、でも消極的支持。自民党よりはマシ」(50代男性・都内在住)
 
 小沢氏はおらず、菅氏の街頭演説であったため聴衆のほとんどは菅氏支持だった。だが積極的な支持は一人としていなかった。長年の菅氏ファンでさえ「政策面で頼りない」と答えるのである。

 14日の投票日まで残すところあと3日。「反小沢」で血道をあげる新聞・テレビが「菅氏優勢」世論を創り出しているが、選挙戦は最後まで予断を許さない展開となっている。


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