国民を巻き込んで底なし沼に沈みゆく民主党政権を象徴するような一日だった。
岡田克也幹事長がマスコミの前で「小沢元代表の政倫審招致を決めたい」と打ち上げたことから事態は一気に緊迫した。13日、党の議決機関である役員会が開かれ、民主党関係者やメディアは固唾を飲んだ。役員会は午後1時半からだ。これに先立ち慌しい動きがあった―
午前10時半から森ゆうこ議員ら親小沢グループは参院会館で「政倫審についての勉強会」を開いた。「小沢氏の政倫審招致反対」の決起集会である。
「親小沢」の議員や敵情視察する反小沢系議員の秘書ら100人余りで会場は一杯になった。
筆者が決起集会を知ったのは森ゆうこ議員のツイートだった。「マスコミフルオープン」と冒頭に記していたこともあり、筆者はおっとり刀で駆けつけた。森議員が記者クラブに所属していないフリーやネットの記者に呼びかけるためツイートしたのである。森氏はじめ親小沢系議員の多くは記者クラブメディアに懐疑的だ。
菅政権批判で存在感を増す原口一博前総務相がいみじくも語った。「正当な手続きなしに検察と一部のメディアで犯罪人であるかのような雰囲気を作りあげ罪に問う。民主主義の墓標を作ってはならない」。
役員会開始を間もなくに控えた午後1時、松野、森議員をはじめ中村てつじ議員ら20人は、民主党本部8階の幹事長室に押しかけた。
リーダー格の松野氏は岡田幹事長に迫った。「本人の同意なくして政倫審に招致するには明白に公益に反する行為がなければならない。具体的に例示してほしい」。
直談判の後、記者会見した松野氏によれば「岡田幹事長は(上記の)質問に対して何も答えなかった」という。親小沢グループによる岡田幹事長の“雪隠詰め”は約40分間続いた。幹事長は最後に「役員会で意見を聞く」と言って彼らを振り切った。警視庁のSPにガードされ10分遅れで役員室に滑り込んだ。
役員会は輿石東参院幹事長らが「招致反対」を唱え岡田幹事長の思惑通りにはいかなかった。1時間半に及ぶ議論の末、岡田幹事長に以下の2点を一任することで落着した―
▼小沢氏自ら政倫審に出席し説明してもらう。
▼出席がない場合は党が(小沢氏を出席させることを)決めなければならなくなる。
これまでと何ら変わりはない。だが菅-仙谷ラインは小沢氏との最終戦争に向けて水面下で準備を進めているようだ。シナリオは次のようなものである。政倫審出席を求める国会議決をする→小沢氏がそれに従わなければ離党勧告→離党勧告に従わなければ除名。
民主党は小沢氏抜きでは選挙ひとつ戦えずマニフェストも実行できない。小沢氏を追い出したところで混迷はさらに深まるだけだ。
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