B型肝炎原告団が厚労省前で座り込み

寒風が吹き付けるなか原告団はキャンドル・チェーンで厚労省を包囲して抗議した。(28日夕、霞ヶ関。写真:筆者撮影)

 B型肝炎の原告団が国家賠償を求めて厚生労働省前の日比谷公園で28日から座り込みを始めた。

 C型肝炎訴訟や薬害エイズ訴訟の際も原告団が政治決着を求めて同じ場所で座り込んだ。まるでデジャブを観ているようだった。医療行政の怠慢は何度繰り返されれば済むのだろうか。

 B型肝炎訴訟は昭和20年代から始まった集団予防接種で注射器の回し打ちをしたためウィルスに感染した被害者が国を相手取って損害賠償と謝罪を求めている裁判である。集団予防接種は国が法律で強制したものであるから原告団は国の責任を問うているのだ。

 札幌、東京、大阪、福岡で原告613人が訴えを起こす集団訴訟となっている。このうち札幌地裁が和解を勧告していることもあり、仙谷由人官房長官と細川律夫厚労相は共に「年内決着を図りたい」としていた。

 ところが菅政権の迷走と民主党のお家騒動で「年内決着」はどこかに飛んで行った。もともと厚労省は因果関係や損害賠償にかかる費用などを理由に和解に消極的だった。B型肝炎の被害者は全国で120~140万人いるとされており、原告団は一律救済を求めている。

 27日の和解協議で国側から何の条件提示もなかったことから、原告団は菅首相の政治決断を強く促すために座り込みを始めたのである。

 全国原告団の谷口三枝子代表(61歳)は厚労省に向かって声を振り絞った。「国が誠意を尽くしてきたとは思えない。大切な和解協議に何度も国は手ぶらでした。菅首相、私たちを寒空の下にさらして最小不幸社会と言えるのですか?菅首相が政治決断をするまでこうして命を削りながら抗議行動を続けます」。

「政権取ったら早期解決するって言ったやないね」。山ノ井・前厚労政務官=左=に詰め寄る窪山さん=右側中央=(28日、日比谷公園。写真:筆者撮影)

 「命の限りここで座り続けるぞ」と決意表明したのは九州原告団の窪山寛さん(64歳)だ。窪山さんは4年前、肝臓ガンを発症し、主治医から「来年4月までの命」と宣告されている。

 窪山さんは山ノ井和則・前厚労政務官に厳しく迫った。野党時代、医療問題に取り組んでいた山ノ井氏は「我々が政権を取ったらB型肝炎訴訟を早期解決する」と約束していたからだ。

 「民主党は命を大事にしてくれるつもりはあるのか。そのために一票を入れたんやけんね。国民の命を大事にせん政権は持たんけんね。『自分たちが政権を取ったら早期解決する』って言ったやないね」。

 山ノ井氏はただ項垂れるばかりだった。

 28日夕方、原告団は初めて細川厚労相に会うことができた。早くも座り込みの成果が出た格好だ。だが細川大臣の口から出たのは「年内の解決が図れずに申し訳ない。1月11日に裁判所の所見が出るのを待とう」。

 細川大臣もこういう他ない。仙谷官房長官の問責や小沢元代表の政倫審出席問題などのゴタゴタで内閣が機能していないからだ。

 弁護団の一人は「(政府の)誰に言ったらいいのか分からない」と頭を抱える。

 窪川さんのケースが象徴するように原告団は時間がない。政治決着で早期解決を図る他はないのだ。原告団は政府から納得の行く回答が出るまで24時間体制で座り込みを続ける。寒風吹きすさぶなか体力を消耗し免疫力が低下すまいかと心配だ。


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