地方から公然と「菅首相退陣を求める声」

選挙対策で悲鳴をあげる都道府県連の幹事長らを前に伸子夫人の自慢話をする菅首相。(5日午後、民主党本部。写真:筆者撮影)

選挙対策で悲鳴をあげる都道府県連の幹事長らを前に伸子夫人の自慢話をする菅首相。(5日午後、民主党本部。写真:筆者撮影)

 能天気もここまできたら犯罪に近い。きょう午後、民主党本部で開かれた「全国幹事長・選挙責任者会議」での菅首相の発言だ。

内紛、TPP、消費税増税など党執行部の不手際で都道府県連は「統一地方選挙を戦えない」と悲鳴をあげている。会議は地方の不満を聞くために急きょ招集されたのだった。

だが挨拶に立った菅直人代表は、そんなことはお構いなしに伸子夫人の自慢話を滔々と語るのだった―

「家内は地元の武蔵野市、府中市で市議会議員の立候補予定者を連れて今日も歩いている。歩くといろんな反応がある。人(地元選対)に言わせると『奥さんが来ている時はこの程度で済んでるけど、自分たちだけの時はこの100倍大変なんです』・・・・・・(後略)」。

 菅代表の発言に“オイオイ”と声をあげたくなった都道府県連幹部は少なくなかったのではないだろうか。『アンタの不手際が地元選対を苦しめてるんだよ。伸子夫人も同罪だ』―こんな声が聞こえてきそうだった。

 会議が始まるまで筆者は片っ端から都道府県連幹部にインタビューした。異口同音に「統一地方選挙は厳しい」という答えが返ってきた。

 「菅さんには退陣してもらいたい。でなければ選挙は戦えない」と語るのは秋田県連の幹事長代理だ。

憤懣やる方ない同県連幹事長代理は続けた。「選挙は全滅に近い。秋田は農業県なのでTPPには猛反対だ。菅さんの統率力のなさ。官僚の言いなり。県民はもの凄く怒っている。農民(の怒り)は特に凄い。選挙で大負けして出直した方が民主党のためになる」。

秋田県は菅グループの寺田学首相補佐官の地元である。「寺田さんに叱られても今日は菅さんの退陣を求める」、県連幹事長代理は涼しい顔で話す。腹を括っているのだろう。

みかんの産地和歌山県も深刻だ。「選挙は厳しい」、県連幹事長代理は眉をしかめる。候補者が朝立ちでチラシを配っても有権者は受け取ってくれない。見向きもしてくれない、という。幹事長代理は理由を「菅さんの指導力のなさ、期待はずれ」と分析する。

愛知県は「減税日本」と真っ向からぶつかり他の地方以上に苦戦を強いられている。「選挙はめちゃくちゃ厳しい」と愛知県連幹部は顔をこわばらせた。

民主党政権が09年マニフェストに沿って経費削減を進めていたら、「減税日本」の台頭はなかったはずである。

怒りを充満させた都道府県連幹事長や選挙対策責任者らを前に岡田克也幹事長は鎮静化を図ろうと懸命だった。予算関連法案の行方、マニフェストの変更、小沢元代表の処分問題・・・。説明するだけ菅執行部の戦略のなさ、戦術のお粗末さを露呈するだけだった。

この党は秋田県連幹事長代理が言うように「選挙で大敗して出直すしかない」ようだ。


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