自然エネルギーの普及阻む勢力と戦う孫正義氏

孫氏は原発の是非を有権者に問う「原発国民投票」も提案している。(22日、ソフトバンク本社。写真:筆者撮影)

孫氏は原発の是非を有権者に問う「原発国民投票」も提案している。(22日、ソフトバンク本社。写真:筆者撮影)

 「通信の自由化」に業績を残した男が今度は「エネルギーの自由化」を目指す。津波被災者のために100億円を寄付したソフトバンクの孫正義社長は「自然エネルギー財団」を近く創設する。

 チェルノブイリと並んで世界原子力史上最悪となった東京電力・福島原子力発電所の事故は、環境破壊にとどまらず日本経済をもドン底に突き落としかねない。

 東京電力は国民を不安にさせないために誰もが納得する情報を開示する義務がある。だが過去の度重なる「事故隠し」「データ改ざん」が象徴するように、東電は事実を表に出さないことを“モットー”とする。多額の広告費や接待で飼いならされた記者クラブメディア(新聞・テレビ)は、東電の隠ぺいに手を貸してきた。

 情報開示の窓口となるはずの東電記者会見でもしインターネットがなかったら、これまで同様国民は真相を知らされないままだっただろう。

 記者会見で威力を発揮しているのがU-STREAMだ。ご存知ソフトバンクが手がける情報ツールである。USTはフリーランスが追及する「中国接待旅行」、「事故のディテール」など東電が隠したがっていることを伝えてきた。記者クラブメディアが黙殺してきたことばかりだ。

 東電福島原発事故の真相究明にUSTつまりソフトバンクが果たした役割は大きい。「情報革命にわき目を振らずに来た」と話す孫氏は、この一か月間悩んできたという。原発は必要か止めるべきか、で。

 エネルギー問題に首っぴきで取り組んだ結果、「今、日本人を不幸にしているのが原発問題」、「批判ばかりしていてもしょうがない」として「自然エネルギー財団」を立ち上げることを決めた。

 アメリカでは昨年から太陽光による発電コストが原子力発電を下回るようになった。孫氏は世界中の科学者100人を集めて太陽光発電を中心に自然エネルギーの普及を目指す。

 米国に踊らされた日本政府は国策として原子力発電を進めてきた。これほどの大事故を招いていながらその姿勢を変える気配はない。

 「自民党は電気事業連合会の言いなり、民主党は電力総連に骨抜き。メディアは電力会社から広告漬け。(そうしたなか)自然エネルギー計画をどう着地させるのか?」、ジャーナリストの上杉隆氏が質問した。

 孫氏は「原発は国民の一番の関心事。啓蒙してゆくこと。これが王道」と答えた。

 心配症の筆者は、原発に反対していた佐藤栄佐久・前福島県知事に孫氏が重なる。佐藤前知事の逮捕容疑は収賄だが、佐藤氏自身「原発反対も逮捕理由のひとつ」(18日、日本外国特派員協会)と捉えているのである。

 政権はあらゆる規制を駆使して自然ネルギーの普及を妨害してくるだろう。マスコミは孫氏を絡めてネガティブキャンペーンを張ってくるだろう。

 筆者は上記(「佐藤前知事」「政権による妨害」「マスコミのネガキャン」)を説明したうえで孫氏に「具体的に対抗策を考えているのか?」と聞いた。

 孫氏は「損害を被ることもあるが、それでも正義を通さなければならない時がある」と決意を示した。

 既得権益を打破しようとすると政権、霞が関、記者クラブメディアが立ちはだかる。その繰り返しだった。だが原発は日本が吹き飛ぶほどの危険性を持つ。「子供たちのためにも日本を残さなければならない」とする孫氏に孤軍奮闘を強いてはならない。

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田中龍作の取材は読者に支えられています。

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