きのう夕方、日本モンサント社が入る東銀座のビル前を、お玉やフライパンを手にした人々がオキュパイした。道行く人々は抗議行動とは思えないユーモラスなアクションに、思わず足を止めた。「何事か?」と言わんばかりの表情だ。
「OCCUPY MONSANTO(オキュパイ・モンサント:モンサント社を占拠せよ)」と名付けられた世界同時アクションのひとつだ。毎週火曜日、首相官邸前で抗議行動を主催している「STOP TPP!!官邸前アクション実行委員会」が呼び掛けた。
日本モンサント社は、世界の遺伝子組み種子の90%をシェアする米国モンサント社の子会社で、日本での遺伝子組み換え作物の流通を主な事業としている。
遺伝子組み換え作物と言うと、「日本はまだ大丈夫だ」と思いがちだ。しかし、既に日本の輸入穀物約3,000万トンの内、約1,700万トン(※1)が遺伝子組み換えと言われている(日本の年間の米生産量は約800万トン)。
家畜用の飼料などが多くを占めるが、たんぱく質を含まない加工品には、『遺伝子組み換え』の表示義務が無いため、トウモロコシから作る糖類、大豆油や調味料などの多くに使われている。
中南米の事情に詳しい印鑰智哉さんが挨拶に立ち、遺伝子組み換え作物の導入が進む南米の状況を訴えた。
「(前略)今年の6月、パラグアイでは、ずっと遺伝子組み換えを拒否してきたルゴ大統領の留守中に政変が起き、現在のフランコ大統領へ変わった。新政府は矢継ぎ早にBt綿花(※2)などを承認した。農民たちはモンサントによるクーデターだと言っている。また、アルゼンチンでは、過去20年間で農地の6割が大豆畑に変わってしまい、以前には無かった飢餓が起きている(後略)」。
今回のアクションでは、モンサント日本支社に申し入れを行ったが、受け取ってもらえなかった。主催者は開口一番報告した。
「前日の連絡もしたが、『一切の受け入れを拒否します』とインターフォン越しに断られた。ホームページにあるモンサント社の誓約では、『さまざまな意見に耳を傾け、対話をすることにより、社会や人々が必要とするもの、疑問を持っている事柄に対して適切に対処するよう努めます』とあるのに、全く違うことをしている」。
「モンサント帰れ!」と書いた大きなプラカードを掲げた男性(藤沢市在住・44歳)は、モンサントの本場アメリカ出身だ。
「アメリカではモンサントに対して、問題意識を持っている人が多い。日本でももっと多くの人が関心を持つべきだ。遺伝子組み換えは、1度始めてしまったらもとに戻れない怖さがある」。
日本がTPPに加盟してしまったら、遺伝子組み換え作物もなだれ込んでくる事は必至だ。それを避けるために、TPP反対と合わせて進めて行く必要がある。
「まだ、日本は間に合う。絶対にTPPを始めてはいけない」。寸劇で農民役をやった女性は聴衆に訴えた。
今にも降り出しそうな空模様の中、引き続き行われた官邸前行動と合わせて400人の参加があった。去年の世界同時アクションと比べて、反モンサントの動きが大きく成長していることを感ぜずにはいられなかった。
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※1 日本モンサント社資料より
※2 殺虫タンパク質(Btタンパク質)を作る遺伝子を組み込むことによって、綿花を食べた害虫を殺すことによって殺虫剤の使用量を減らすことができるという。
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