「郵政非正規社員」の命運分ける参院選

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新旧大臣引継ぎ式。日本郵政で働く「非正規社員の正規化」は亀井氏の肝いりだ【14日、金融庁大臣室で。写真:筆者撮影】

 参議院選挙の結果に、今後の生活設計を左右されそうな青年が6万5千人もいる。日本郵政で働く非正規社員たちである。

 日本郵政グループ全従業員の約半分(47%)を占める非正規社員は20万人。同質の労働に従事しながら年収は正規社員の3分の1だ。「小泉・竹中」の郵政改革で一気に増えた。

 非正規社員の正社員化は亀井静香元郵政相の肝入りで決まり、非正規社員の3分の1にあたる6万5千人をこの秋から3~4年かけて正社員化することになっている。それに伴うコスト増は200億円を超すといわれ、政界には反対する勢力が少なくない。「郵政改革法案」本体とも連動する。

 正社員による「日本郵政グループ労働組合」の組合員数は22万人余り。組織率は9割を超す。単産としては日本最大の労働組合で民主党支持だ。非正規社員が正社員化されれば、これに5万人を超す組合員が加わることになる。

 かつての全逓(全逓信労働組合)ほどの集票力はないが「郵政労組」から出る票は、家族も含めれば全国で数十万票になる。野党にとっては大きな脅威である。衆院の小選挙区、参院の地方区で競り合っている場合は、当落を分けるほどの票だ。

 小泉改革を未だに信奉する自民党の一部勢力は他の野党を巻き込み、郵政法案とともに、正社員化計画を葬り去ってしまおうと画策する。某元幹事長や某首相経験者が中心となり、公明党やみんなの党に働きかけているという。選挙協力や選挙後の多数派工作に乗らないよう、と呼びかけているようだ。

 国民新党を加えても与党が参議院で過半数を割ることになれば、当然「郵政法案」は消し飛ぶ。「郵政法案」に含まれる項目ではないが、「非正規社員の正社員化」も難しくなる。野党は参院で200億円を超すコスト増について攻撃してくるだろう。

 国民新党を加えて過半数を取れば「郵政法案」も「非正規社員の正規化」も大丈夫だ。

 亀井静香前郵政・金融相は14日、退任記者会見で「民主党には(参院選で)頑張ってもらわなければならない。神に祈るような気持ちだ。負けたら大変なことになる」。豪放磊落で鳴る亀井氏のこれほどまでに神妙な表情は見たことがない。

 ただ民主党単独で過半数を取り国民新党を切ることになった場合、事情が変わってくる。非正規社員の正社員化については同党関係者は「あれだけはやる」と言い切る。問題は「郵貯預け入れ限度額」だ。亀井大臣(当時)が、菅副総理(当時)とスッタモンダの末押し切った2,000万円から大きく減額される見込みだ。

 いずれにしろ日本郵政の「非正規社員の正規化」は、国民新党を加えて過半数を割るようなことさえなければ実現しそうだ。

 政権交代を成し遂げた昨年の衆院選挙では、全国郵便局長会の「郵政票」が民主党の支えとなった。今回の参院選は非正規社員と正規社員の「郵政票」が獲得議席数に影響を及ぼすことになる。

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