内戦状態の祖国を憂う在日リビア人たちが26日夕、東京都心をデモ行進した。東京のデモも中東・北アフリカと同じようにフェイス・ブックやツイッターで呼びかけ合って集まった。中心になって発信したのはリビアから日本に来て6年目になるアーデル・スレイマンさん(23歳・慶応大学生)だ。
祖国はカダフィ政権によってネットが遮断され、携帯電話も繫がったり繫がらなかったりだ。アーデルさんは今朝(日本時間)、やっとトリポリの兄と電話がつながった。
「電話の後ろの方から激しい銃声が聞こえた。兄によれば『通りの壁は銃痕で穴だらけ』」。アーデルさんは緊張した表情で話した。
家族と連絡が取れない在日リビア人もいる。オマルさんはトリポリの家族にこの3日間、電話をかけ続けているが誰も出ない。「安否も分からない」と顔を曇らせた。
リビア情勢は混沌としているようだ。日本の新聞・テレビは軍が市民の側についたように伝えているが、アーデルさんによればまだカダフィ大佐に忠誠を示す幹部もいるという。
「軍の指揮官が部下に『傭兵を撃て!』と命じた。だが銃口の先は傭兵ではなく反体制派の市民だった」。アーデルさんは辛そうに語る。
参加者たちはリビア王国(イタリア→国連統治下を経て独立)の旗を持って集まった。「王国の復活を望んでいるのではない。もう一度独立しようという意味です」(アーデルさん)。
「ストップ・ザ・ジェノサイド」「カダフィ・アウトサイド」・・・韻を踏んだアラブ世界らしいリズムのシュプレヒコールが大勢の人通りで賑わう渋谷界隈に響いた。
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