兵(つわもの)どもが夢の跡。衆院選挙で自民党の現職・小池百合子氏と民主党の新顔・江端貴子氏が激突した東京10区(豊島区と練馬区の一部)を、選挙後初めて歩いた。
選挙好きの商店経営者によれば、接戦の末小池氏を破った江端氏は支援者の家や事業所を一軒一軒御礼の挨拶に回っている、という。「この店にも来たよ」と顔をほころばせた。
一方の小池氏は車で大通りを流しただけだそうだ。
業界の言葉で、勝った時は「御礼の挨拶回り」、負ければ「選挙の後始末」と言う。この二つをおざなりにすると次の選挙は勝てない。当選した政治家から「有難うございました。おかげさまで勝てました。またご支援御願いします」と言われると、また投票したくなるのが人情だ。
「選挙の後始末」はひと苦労だ。多くの候補者は選挙戦で借金を抱えるが、「戦後処理」で落選候補者の借金はさらに膨らむ。「戦後処理」とは選挙違反で逮捕された運動員の保釈金を用立てることだ。
これをいい加減にすると次の選挙に再出馬しても負ける。「一体、誰のために危ない橋を渡ったんだ!」と支援者は愛想を尽かす。当選した場合も「戦後処理」は大切だ。
前回(2005年)の衆院選で誕生した夥しい数の小泉チルドレンは「御礼の挨拶回り」などすっぽかして東京に出て来て、やたらとマスコミに登場していた。
小沢チルドレンはその轍は踏むまいとしている。生みの親の小沢氏は“子供たち”に対して「御礼の挨拶回りが終わるまで東京に出てくるな」と厳命しているのだそうだ。
昨秋にもあると予想されていた総選挙が、一年近く遅れたこともチルドレンを逞しくしたようだ。公示直前に数合わせのように立候補表明した小泉チルドレンとは対称的だ。
彼らは小沢氏から指導された通りに戸別訪問3万軒、辻立ち毎日50回を励行した。これまでの民主党候補者が「ドブ板」と蔑んでいた運動を来る日も来る日も繰り返したのだった。
有権者の目を見て話しかける。リアクションは手に取るように分かる。「ドブ板」は民意を汲み取るのに適した手法だ。冒頭の江端氏が選挙戦終盤、豊島区大塚の盆踊り会場を歩いた。有権者が江端氏の手を握ってきて生活苦を訴えていた。そばで見ていた筆者は「江端氏は勝てる」と直感したものだ。
次の総選挙で143人もの小沢チルドレンは、勢力を減らすかもしれない。だが小泉チルドレンのように83人から10人に激減するということは先ずない。手ごわい存在になりそうだ。
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