麻生前総裁の後継を選ぶ自民党総裁選挙は18日、告示された。西村康稔・前外務政務官(46才)、河野太郎・元法務副大臣(46)、谷垣禎一・元財務相(64)の3人が立候補したが、「森元首相脚本」による茶番劇となりそうだ。
告示前日に突然“頭角”を現した西村氏の存在に「おや?」と首をかしげたのは筆者ばかりではないだろう。西村氏は通産省から石川県商工課に出向していた時代に森氏に見出され国会議員となった。当然、森元首相率いる町村派の所属だ。
世代交代を避けたい自民党の長老たちは、谷垣氏を総裁にしたい。全派閥の推薦を受けて議員票では谷垣氏がリードしている。だが地方党員が若手の登場を望み、もし河野氏が当選するようなことにでもなれば、長老支配は崩されかねない。そこで同じく若手の西村氏を総裁選に立候補させた。若手分断作戦である。(趣味の悪い)脚本は森キロウ元首相によるものだ―ー永田町の見立てである。
谷垣氏は派閥に乗っかり、西村氏は森キロウ氏の差しがね、河野氏は派閥政治打破。3人のスタンスは記者会見でもよく現れていた。「自民党再生のために森喜朗という人は害か?」という質問が記者団から出た。
谷垣氏「特定の人はとやかくいうつもりはない。『みんなでやろうぜ』というのが私のスタンス」。
西村氏「(森氏からは)能力を評価して頂いている。今も教えて頂いている。(総裁選に)出ますと挨拶した」。
最も答えたくない質問にアワを食った西村氏はシドロモドロだった。
河野氏「森喜朗さんはそろそろ出処進退をお考えになる時」。
河野氏はこれまで総裁選の度に出馬に意欲を示していたが、推薦人20名が集まらず立候補できなかった。今回は「世代交代しかない」と決起した若手、中堅が懸命になって集めた。推薦人20名を集めるのがどれだけ大変かを河野氏が明かした―「派閥の領袖が仲間に電話をかけてきて『河野太郎の推薦人になるな』と圧力をかけてきた」。
そのうえで「これだけ選挙に負けたのにまだ懲りてない。そこ(派閥領袖)を切らなければ党の再生はない」とまで言い切った。
河野氏は「森喜朗さんはじめ談合で福田内閣を作り上げた派閥政治が自民党を損ねた」と容赦なかった。
密室でコソコソ決める派閥政治は、国民の知らないところで政治が決まる。国民生活は二の次になりがちだ。それに有権者からノーを突きつけられた結果が、総選挙の大惨敗だった。
谷垣氏が総裁に選ばれれば、森キロウ氏の院政となるだろう。繰り返し指摘しているが、森キロウ元首相らが退場しない限り自民党の再生はない。
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