総選挙を前に考えよう! 国と地方は「コインの裏と表」

 東国原宮崎県知事と並んでメディアの脚光を浴びる橋下徹・大阪府知事が8~9日、自民、公明、民主の党本部を訪れた。総選挙が間近に迫るなか、支持率80%を超える橋下知事の人気にあやかりたい3党は下にも置かぬ歓待だった。

 民主党では原口一博ネクスト総務相や逢坂誠二・分権調査会事務局長らと地方分権について意見を交わした。45分間の懇談は、一部始終報道陣に公開された。橋下知事は「国の奴隷となっている自治体に公民権を与えて頂きたい」と最期の最期まで繰り返し訴えた。霞ヶ関が有無を言わさず押し付けてくる直轄事業などに対する『拒否権』を法律で確立してほしい、と言うのである。

 懇談会の後、数人の記者が逢坂議員にブラ下がった。北海道ニセコ町長を3期務めた逢坂氏は当然、地方自治に詳しい。橋下知事と同様「地方に権限を」と話すのかと思っていたら、そうではなかった。逢坂氏は「地方分権というのは地方の問題じゃないんだ。国のあり方を問い直すことなんだ。国と地方は『コインの裏と表』だね」と説いた。

 政府の仕事は外交、防衛、金融財政に限るべき、との原則論がある。右肩上がりの経済成長を続けている時代ならともかく、超高齢化社会を迎えて国力が衰退するなか、地方に任せれば済む仕事にまで国がシャシャリ出て、そこに予算とマンパワーを充てる余裕などない。膨大な二重行政はこの国を破綻させかねないのである。

 都道府県の河川管理課、道路管理課がありながら国交省の地方整備局がある。都道府県の職業安定課があるのにハローワークが全国隅々にまである。地元の事情を知る自治体に任せた方が効率良く進むところに国が出先機関を出して、「アーせい、コーせい」と指導してくるのだ。あげくに金まで出させる。橋下知事の言う「ぼったくりバー」だ。

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「国の奴隷になっている地方に公民権を」と橋下知事(民主党本部で。写真=筆者撮影)

 こうした国の出先機関には20万人もの公務員がいる。国家公務員の3分の1をも占める人員数だ。国の出先機関、特に地方整備局は選挙ともなれば、業界団体を締め上げる強大な集票マシーンと化す。

 
 選挙や陳情処理(これとて選挙対策)でさんざっぱら霞ヶ関にお世話になっている自民党が、地方分権を実行できるはずがない。子が親を殺すようなものだ。

 
 では勇ましく「霞ヶ関解体」を叫ぶ民主党はどうか。最大の支持母体は国家公務員の労働組合「官公労」だ。自らの最大の味方である組織を弱体させるようなことはできまい。やればこちらも尊属殺人だ。

 民放の報道番組で片山善博・元鳥取県知事は「霞ヶ関改革と地方分権は総選挙の一大争点になるでしょうね」と言い切った。

 裏も表も体をなしていないコインは、貨幣と呼ぶに値しない。それをつかまされた国民は生活できなくなる。まともなコインにするにはどうすれば良いか。総選挙を前にじっくり考えたい。

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