上空を飛ぶのではなく、連日4本以上ものロケット弾が着弾するイスラエルでも「誤探知」がある。落ちもしない地区に「ガザからロケット弾が飛来してくる」との警報が鳴ることがある。ただしこちらは日本のようにお粗末な人的ミスではなく、早期警戒システムの作動の誤りである。
1991年の湾岸戦争で、イスラエルはイラクのサダム・フセインから31発(※)ものスカッド・ミサイルを撃ちこまれた。パトリオット(PAC3の初期型)で迎え撃ったが、11発(※)ほど外している。迎撃できなかったミサイルはネゲブ砂漠などに落下した。
弾頭には大量破壊兵器は積んでいなかったが、肝を冷やしたイスラエル政府はこれを機に自前のミサイル防衛網(MD)の開発を急いだ。完成したMDは米国製よりも精度が良く値段も安い。世界の国防当局者、軍事産業関係者の間では有名だ。日本の防衛省も知っているはずである。
高額で精度も落ちるアメリカ製の方をなぜ買うのか。国民の生命・財産が危険にさらされ血税が無駄に使われるのだ。民間企業であれば背任の疑いをかけられても仕方がない。
イスラエルを参考にすべき所がもう一つある。「自分の国は自分たちで防衛する」ということだ。日本のように二言めには「国連安保理」「米韓と協調」などとは口が裂けても言わない。
イスラエル空軍がイラクの「オシラク原子炉」を急襲、破壊した作戦(1981年)は、米国に知らせたのは直前だった。現在のように精密誘導弾も巡航ミサイルもない時代に、F16戦闘機のパイロットが「手作業」で核施設を壊滅させたのである。
当時、国際世論はイスラエルの先制攻撃を非難した。だが、イスラエルがイラクの原子炉を叩いていなかったら、サダム・フセインは「本当に」大量破壊兵器を手にしていたであろう。
それからちょうど10年後に勃発した湾岸戦争でイスラエルに撃ち込まれたスカッドミサイルの弾頭に核が載っかっていても不思議はない。「自国は自分で守る」の典型的なケースだ。
同盟国と言えども自国の利益が最優先だ。冷戦真っ只中と時代錯誤し、米国が日本をいつまでも守ってくれると思っていたら、とんだ裏切りに遭うことを肝に命じなければならない。
(※)筆者注 撃ち込まれ、迎撃し損ねたミサイルの数については諸説ある。