鳩山首相、早期退陣はしないが…

鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金問題をめぐる捜査が大詰めを迎える中、鳩山氏本人の政治責任を問う報道が目につくようになった。気の早い週刊誌や月刊誌には「鳩山早期退陣」の見出しが躍る。「小沢幹事長が鳩山首相に見切りをつけた…」などとまことしやかに書き立てる。

 こうしたマスコミ報道とは裏腹に「鳩山首相周辺と小沢幹事長は早期退陣を考えていない」ことが民主党関係者の話でわかった。焦点の偽装献金問題をめぐっては、母親からの資金提供を「贈与税の後申告」で処理する方針を固めた。政治資金規正法で在宅起訴されると見られる公設秘書の件は、東京地検の捜査に委ねるしかないことも、皮肉な言い方をすれば鳩山首相には“好都合”だ。

 首相と同じく母親から資金提供を受けていた弟の邦夫氏は8日、都内のホテルで開かれたパーティーで「私は贈与税として国庫に納入する」と“宣言”した。兄へのアシストとしては上出来である。

 早期退陣しない理由として前出の民主党関係者は「細川連立政権の教訓があるからだ」と解説する。細川連立政権(1993年8月~94年4月)は、細川護煕首相が佐川急便事件に絡んだ金銭スキャンダルの追及に耐え切れずに辞任し、わずか8ヶ月の短命に終わった。後を受けた羽田内閣もわずか3ヶ月足らずで瓦解し、野党だった自民党を政権に復帰させる結果となった。

 7党1会派から成る細川連立政権の司令塔だった小沢一郎氏(当時新生党幹事長)は「あの時、細川さんを(総理に)留まらせておくべきだった」と述懐する。「あと1回予算編成をやれば自民党は干上がっていた」とも悔しがる。

 鳩山由紀夫氏は細川連立政権で官房副長官として内閣を支えていた。細川首相の早期退陣が連立政権の崩壊に結びついた、という教訓が身に染みている。羽田内閣崩壊後、小沢氏、鳩山氏ともに15年もの野党暮らしが続いた。官僚からは軽んじられ、予算をめぐっても蚊帳の外に置かれる野党は辛い。

 衆議院に300余議席を持つ現在の民主党政権は、細川連立政権のような寄り合い所帯ではない。だが鳩山政権が倒れれば、すぐに取って代わる総理候補者はおらず、恒例の「お家騒動」が勃発しかねない。

 年が明ければ永田町は参院選モードに入る。参院でも単独過半数を目指す民主党としては、内部分裂の状態で参院選に突入するわけにはいかない。普天間基地の移設や補正予算の編成などで指導力のなさがつとに指摘される鳩山首相だが、党の分裂を避けるためには当面支えなくてはならない――小沢幹事長の腹の中はこんな所だろう。

 「ただ鳩山内閣の支持率が余りにも落ち込んだ場合は総理の首をすげ替えることもある」。前出の民主党関係者はこう語った。とりあえず鳩山内閣で年を越しそうだ。

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