立ち退きを迫るハマスの脅しにも屈しなかったケマルさん(前稿~中~)の長女オムスィアットさん(13歳)。目の前で弟がイスラエル軍に射殺された。雷の音が射撃音に聞こえ雨の中を駆け出す、という。
精神を病んだオムスィアットさんは、ポーランドまで治療を受けに行った。だが、イスラエル軍が侵攻してきた時の光景が、今なお毎晩夢に出てきて胸を締めつける。
少女の苦悩は昇華された。オムスィアットさんの書いた詩が、アル・アトゥラ村を取材していた英国人記者の目に留まったのである。アラビア語から英語に翻訳されイギリスでも紹介された――
子供たちに何故罪があるの。何をしたというの
家もなく腹を空かせて……
弟は何故殺されなくてはならなかったの
3歳の妹はなぜ空腹を我慢しなければならないの
ガザの地であとどれだけ殺戮が繰り返されるの
ガザの地であとどれだけ殉教が繰り返されるの
オムスィアットさんに「ハマスをどう思うか」と聞いた。彼女は「紛争も破壊もすべてハマスがもたらした」と大きく首を横に振った。
彼女の将来の夢はイスラエル軍の侵攻前は学校教師だったが、侵攻後はジャーナリストに変わった。「戦争の真実を世界に訴えたいから」と話し唇を真一文字に結んだ。