ガザ最北端にあるエレツ検問所。ガザと「外界」との出入り口となる5つの検問所のうち、「人専門」の検問所だ。
爆弾を抱えてイスラエルに入ることなど先ず考えられないエイドワーカーやジャーナリストも徹底的にチェックされる。X線検査はホールドアップさせた状態でスキャナーが体の周りを回転し、所持品検査は荷物の中味一点一点に至るまで調べる。
2000年9月に「アルアクサ・インティファーダ」が発生するまで、ガザの人々はエレツ検問所を通ってイスラエルに仕事に出かけていた。めぼしい産業がないガザの人々にとって、イスラエルでの仕事は現金収入を得る貴重なものだった。
とはいえイスラエルはガザと交戦関係にある。ガザの労働者を易々と入れるわけには行かない。検問所のチェックは厳しい。22年間に渡って毎日、イスラエルまで働きに出かけていたサイード・ソバイタさん(51歳)に聞いた――。
記者:検問所ではどれ位の時間待たされたか。
サイードさん:朝(ガザ→イスラエル)は2時間、夕方(イスラエル→ガザ)が1時間。
記:2時間も待たされてそれから現場に行くには相当に早起きしなければならないが、どんな生活パターンだったのか。
サ:朝3時に家を出る→4時に検問所着→2時間待たされる→検問所から1時間かかって現場着→7時に働き始める→午後4時に仕事終了→1時間かけて検問所着→1時間待たされる→午後6時に検問所通過→午後7時に自宅着。
記:検問所でのイスラエル軍の対応はパレスチナ人にとって屈辱的だった と聞くが…
サ:ズボンを脱がされ、シャツをまくり上げるよう命令されるなどした。
記:他にも屈辱的なことはなかったか。
サ:それ以上話したくない。(口にするのも忌まわしいほど屈辱的だったようだ)
記:射殺されることもあったと聞いたが…
サ:時々あった。
記:どんな理由で?
サ:「うるさい」という理由だけで射殺された。脚を撃たれることもあった。銃床で殴られたりもした。狭い所で2時間も待たされたら騒々しくもなる。
記:よく我慢しましたね。
サ:9人の家族(妻と子供8人)を食べさせて行かなくてはならないからね。
記:収入はどれ位ありましたか。
サ:月に700ドル。建設現場の仕事だった。
サイードさんのような働き方は「イスラエルへの出稼ぎ」と言われ、多くの労働者が収入を得ていた。これが禁止されガザの失業率は大きくハネ上がった。ガザの経済を支えていた「イスラエルへの出稼ぎ」は、スボンを脱がされ、仲間が射殺されるのを我慢することでもあった。
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瓦礫の広域処理で北九州に飛び、大飯原発の再稼働で福井に行き、そして東電の刑事告訴で福島に……『田中龍作ジャーナル』は、現場主義が信条ですが、取材には、思わぬほど費用がかかります。
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