就職難が招く少子化 ~前稿で書き残したこと~

 「派遣(労働者)の奴らなんて嫌いだよ。大体ろくすっぽ働きもせずに甘えてるよ」などという発言を時々耳にする。実情を知らないのだろう。とんでもない認識違いだ。

 派遣労働者の名誉のためにも、フルキャストからコンビニ店に派遣されていたAさん(前稿で登場)の働き方を紹介しよう。勤務時間はゆうに1日12時間、深夜勤務も1週間に2~3度ある。休みは週に1日あるかないかだ。こまネズミのごとくよく動く。これで手取りは20万円/月ちょっと。給料が安いのは派遣会社のピンハネによるものだ。

 他の業種の派遣労働者も取材したが、月20万円以上得る人は勤労意欲のかたまりで体も丈夫だ。それでも大きな病気や大ケガなどしようものなら明日から仕事はなくなる。多くの派遣会社は雇用保険などに加入していないので収入もなくなる。

 Aさんは勤勉で教養もあった。ジャーナリストの筆者にパレスチナ情勢を語りかけてくるほどだった。無名大学卒であったために最初に就職したのが労働条件の悪い外食産業だったのが、Aさんの躓きの元だった。

 「一流大学卒」→「一流企業・官庁に就職」の図式を外れると一所懸命働いても一人食べていくのさえ危ういのが今の世の中だ。勤勉で教養があっても結婚できないのである。少子化はこれから恐ろしいほどの勢いで加速していくだろう。

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