【ハケンという蟻地獄】
雇用情勢が悪化するなか「派遣ユニオン」が23~24日の両日、非正規労働者にアドバイスする電話相談を行っている。
ユニオン運動センター(東京・代々木)に特設された6台の電話には頻繁に非正規労働者から相談が寄せられている。
生活を少しでも安定させたいために正社員化を希望する相談が中心だ――
「派遣先で3年以上働いているので正社員になりたい」(30代・男性)。
「5年2ヶ月、神奈川県内の工場で契約社員として働いてきた。社員にするという約束だったのに、逆に解雇された」(外国人労働者・女性)。
労働者派遣法では、派遣先の企業は同じ職場で3年以上働いた労働者を直接雇用する義務がある。上記の非正規労働者が勤める企業は明らかに法律違反だ。
「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長によれば「派遣先の企業は、3年過ぎたことをハッと気付きすぐ解雇する」のだそうだ。
深刻なのは細切れ雇用がさらに短期化していることである――
「いやがらせが酷かったので、会社側のアンケートに記入したら、『今月一杯で解雇する』と言われた」。愛知県の自動車工場で働く派遣労働者からの相談だ。彼は2ヶ月ごとの細切れ契約だった。アンケート記入の“お咎め”がなくとも契約期間の満了で切られる運命にあった。
関根書記長は「細切れ雇用が増え、さらに短期化している」と
憤る。リーマンショック(2008年秋)の前までは製造業の場合、3ヶ月契約と6ヶ月契約が主流だった。ところが今は2ヶ月契約が主流となっている、という。短期雇用が一層短くなっているのは厚労省の調査でも裏付けられている(平成21年度労働者派遣事業報告)。
「細切れのさらなる短期化」は、不景気で企業が頻繁に生産調整するためだ。電器メーカーがめまぐるしく機種変更することも影響している。携帯電話が典型的な例だ。
メーカーは派遣会社に「この機種は明日で生産中止なので全員解雇です」と何食わぬ顔で言ってくる。商取引の面からも契約違反で違法だが、派遣会社にとってメーカーは大事なお客様なので文句一つ言えない。言おうものなら、次から発注がなくなる。
これには派遣会社も「堪らん」と嘆いているそうだ。切られる派遣労働者は「もっと堪らん」。明日から稼ぎがなくなるのだから。現下の景気では次の仕事を見つけるのは容易ではない。持ち金が尽きればアパートの家賃も払えなくなる。
筆者は相談電話の向こうから派遣労働者の悲鳴が聞こえてくるようでならなかった。
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