日本の原発危機管理 イタリア、イスラエルと雲泥の差

仏アレバ社のアンヌ・ローベルジョンCEO。日本の原発市場への本格参入を目指す野望をのぞかせた。(19日、港区のホテルで。写真:筆者撮影)

仏アレバ社のアンヌ・ローベルジョンCEO。日本の原発市場への本格参入を目指す野望をのぞかせた。(19日、港区のホテルで。写真:筆者撮影)

 格納容器が破損した東京電力福島原発2号機から漏出する大量の汚染水を処理することになった仏アレバ社。19日、都内で記者会見したアンヌ・ローベルジョン最高経営責任者(CEO)が野望をチラリとのぞかせた――

 「我々は今、三菱重工と共に新しい原子炉を開発中です。セキュリティーとセーフティーにおいて最も先進的な炉です。いま要求されていること(安全性)を100%満たしています」。

 日本にある54基の原発は、米国ウェスティングハウスと東芝が共同開発した原子炉が主流だ。

 仏アレバ社は三菱重工を橋頭堡に日本の原子力市場に本格的に参入しようという腹づもりなのだろう。

 世界最悪の原発事故が起きたのにもかかわらず、同社は日本市場に売り込みをかけたいようだ。

 気を付けなければならないのは米国、フランスとも地震帯の上に乗っかっている国ではない、ということである。ウェスティングハウス製もアレバ製もしょっちゅう地面が大きく揺れる国で設計された原子炉ではないのだ。

 日本は大地震頻発国でありながら地震とはあまり縁がない米国の原子炉を買い続けて来たのである。

 イタリア政府は福島の事故を受けて原発計画を無期限で凍結することを決めた。イスラエルは十二分な核開発能力を持ちながら原子力発電所は作らない。イスラエルは回りを敵に囲まれ国土が狭い(日本の四国とほぼ同じ)。原発がテロ攻撃に遭ったら国土も民族も滅びる可能性がある。

 イタリアは地震が多い。イスラエルは国土が狭い。両国とも日本とよく似た事情を抱えるが、原発事故に対する危機意識には雲泥の差がある。

 イタリアとイスラエルの危機管理がしっかりしていると言うべきか、日本がおめでたいと言うべきか。  

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田中龍作の取材は読者に支えられています。

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