【リビア発】 軍事施設にカダフィ栄華のあとを見る 

軍事施設とは不釣り合いな宿で、独裁者はうら若き愛人たちと夜を共にした。内部は焼き討ちで黒焦げだ。(政府軍ベンガジ基地。写真:筆者撮影)

軍事施設とは不釣り合いな宿で、独裁者はうら若き愛人たちと夜を共にした。内部は焼き討ちで黒焦げだ。(政府軍ベンガジ基地。写真:筆者撮影)

 ベンガジで「反カダフィ・デモ」が発生して4日目にあたる2月19日、政府軍の東部最大拠点であるベンガジ基地に爆薬を積んだBMWが突入した。基地正門は大破。自爆テロである。

 これを口火に武器を手にした民衆と反政府軍が基地になだれ込んだ。政府軍との激しい攻防になる。低空を飛び機銃掃射を浴びせてくる政府軍機に反政府軍は高射砲で応戦した。市民数百人が死亡する。

 4日間に渡る攻防の末、反政府軍が基地を攻め落とした。基地は後楽園ドームが3~4個入る広さだろうか。建物はいずれも焼き討ちに遭っており、内部は黒焦げだ。

 「カダフィはアフリカの猿だ」。兵舎の壁に黒色のスプレーで落書きされていた。豊富なオイルマネーをばら撒いてアフリカの王様を気取っていた独裁者をからかったものだ。

 ベンガジは部族の違いから西のトリポリへの対抗意識が強く、反カダフィ感情も強い。「カダフィ政権打倒」を掲げる反政府軍はここで蜂起し、今も「大本営」を置く。

 自分への反感が強いことを知ってか、カダフィは年に一度くらいしかベンガジを訪れなかったという。ベンガジ訪問の際は自分の娘より若い美女たちを連れた。大佐ご一行の豪華宿泊所が基地の中にあった。

 軍事施設の中にあって場違いのデザインをした宿泊所は、高さ約3メートルの壁で他の区画と隔てられている。壁の東隣はカダフィ親衛隊のための区画だ。寵愛する美女たちは、親衛隊にも見せたくなかったようだ。

 近くの壁には親衛隊員はじめカダフィの取巻きたちの名前が書き連ねてあった。『この人たちを見つけたら知らせて下さい。カダフィがいますから』の一文と共に。

 ベンガジの少年たちが栄華のあとを見物に来ていた。少年の目に独裁者の乱行はどのように映っていたのだろうか。「(女性を幾人も引き連れるカダフィは)気持ち悪くて言葉にできない。カダフィはリビア人じゃない。リビア人はあんなことをしない」。ムハマド・アブード・サラームさん(17歳)は、首を横に振りながら語った。 

 国民を飢えにさらしながら、自らは贅沢三昧。うら若き美女をも権力で我が物とする。独裁者の常とも言える。カダフィは同じく奢侈を極めたサダム・フセインとよく似た末路をたどった。

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