恐れていたことが現実となった。原発再稼働の前提となるストレステストをめぐる専門家の意見聴取会議から傍聴者は締め出されることが決まった。
枝野幸男経産相はきょう、記者会見で「今後、別室でモニターを通して傍聴していただく」との方針を明らかにした。傍聴できるのは事前登録者に限ってだ。
枝野大臣は「一昨日(18日)の意見聴取会の残念な状況を踏まえて」と理由を説明した。この日、原子力安全保安院が傍聴の市民を排除して意見聴取の会議を別室で開こうとしたことから、会議は紛糾した。枝野大臣は「議論のための環境整備」としているが、傍聴者を排除してまで強行する理由はどこにあるのだろうか。フリーランスやネットメディアの記者から質問が出た。
ニコ生・七尾氏:あらかじめ傍聴のルールを決めて守れなかった人を退席にするという方法は考慮しないのか?
枝野大臣:そのルールでやったところ、会終了後ではあるが委員の皆さんにつめよるなどの混乱が生じた。やむを得ず行ったことだ。
田中:ボイコットした委員は「公開性が保てないので会議に出ない」と言っている。それでも傍聴の市民を閉め出すのか?
枝野:そうした進行のやり方に問題があれば、当然議事録にも公開されるので、意見聴取会における有識者の皆さんの意見として受け止めるということだ。
田中:カメラワークでいかにも平等にやっているように見えるが?
枝野:経産省としても別室でモニターで見ていただくようなことはやりたくない。手間もかかる。決して我々がそう望んでいるわけではない。ルールを守って頂けずに、委員の皆さんに詰め寄る等の議事の進行を妨げ議論のための環境を整えられないことが、残念ながら一部の傍聴者の皆さんに生じた。
もちろん、公開を求めている委員の方のご意見も重要だが、詰め寄られた委員は、政府から依頼して科学者としての知見を発表する場に来て、傍聴の方から詰め寄られた。平穏な状況でご議論いただくという環境が整えられることが前提だと思う。
田中:三菱重工から多額の献金を受けた人が司会をしている。司会者は議事進行を理由に慎重派の質問をまともに取り上げない。会議そのものがインチキではないか。
枝野:委員の方に対するご意見があると思うが、前回出席いただけなかった委員の方がいるということは、まさに幅広い立場の方に入って頂いたことの証しだと思う。そうした立場の方が、進行その他について意見はあるだろう。
科学的知見から、専門的、技術的に安全でないと考えたならば、まずどういう問題があるのか指摘をしてもらう。議事録を含めて国民の皆さんにすべて公開されるわけだし、私のところに報告も上がってくる。本当に安全でないという危惧の部分については、具体的指摘をしてより幅広くチェックをして頂きたいと思う。
枝野大臣とのやりとりは噛み合わないままだった。原発メーカーから献金を受けた学者が意見聴取会議の司会進行をしていることについては、真正面から答えず、お茶を濁した。
原子力・安全保安院が電力業界はじめ原発産業と密室で原子力行政を進めてきた結果、東電福島第一原発の爆発、放射能漏れ事故を招いたのである。
ゆえに原発事故の再来を懸念する市民が「議事は公開で行え」「同じ部屋で傍聴させろ」と要望しているのである。今後、すべての原発に関するストレステストの検証は傍聴者なしで、しかも推進派が中心になって進められることになる。保安院を経産省から切り離したところで原発事故は再び起きる。