【2・19杉並デモ】 カーニバルのノリで5千人が脱原発

ラテン音楽のバンドが参加者の気分を高揚させた。=19日、杉並区。写真:筆者撮影=

ラテン音楽のバンドが参加者の気分を高揚させた。=19日、杉並区。写真:筆者撮影=


 情熱的な音楽を奏でるバンドが先導し、参加者たちは歌い踊る。東高円寺一帯を練り歩いた「2.19脱原発杉並デモ」は、まるでカーニバルのようなノリだった。デモではなく賑やかなパレードである。組織の動員もイデオロギーの押し付けもなく、「原発はいらない」と願う人たちが自由に集まった。

 「若い衆も、大先輩も、父ちゃんも、母ちゃんも、商店主も、いろんな政党も一緒くた。しぶとく、しつこく、むやみやたらと手を結んで(脱原発を)訴えていきます」―呼びかけ人の一人、那波かおりさんの挨拶が象徴的だ。パレードを運営する約100人の実行委員はいるが、主催者はいない。

 参加者の大半は都内だが、横浜や千葉などから電車を乗り継いで来た人々の姿も目立った。着ぐるみ、マント、ゼッケン…集合場所の「蚕糸の森公園」は、「脱原発」のフレーズを書き込んだ衣裳や意匠をつけた市民で溢れかえった。

 誰が仕切っているのか、分からない。公安は頭を抱えた。投入された私服刑事はこれまでの脱原発集会で最多との見方もある。パレードの外側をゾロゾロと付いて歩き、内側にも“密偵”を送り込んでいた。

 圧巻は出発前の参加者挨拶だった。社民党の保坂展人・世田谷区長に続いて一水会の鈴木邦男顧問が登壇した。コテコテの左翼と民族派右翼のコラボである。

「『脱原発』集会に参加すると左翼を利するという意見もあるが、国を守るのに右も左もない…」。鈴木氏が述べると割れるような拍手とどよめきが起きた。

 目黒区在住の音楽ライター(女性40代)は「いろんなことはできない、脱原発に専念したい」と話す。

 横浜の会社員も同様の意見だ―「脱原発はシングルイシューで取り組まなくてはならない。『あれもこれも』は全部だめになる。(かつての)左翼の失敗を繰り返してはならない」。かくいう彼は学生時代、社青同解放派の闘士だったという。

 国家さえも支配下に置く原子力村に対抗するには、小異を捨てて力を結集するしかない。参加者の思いは共通していたようだ。鈴木顧問は筆者のインタビューに「脱原発に右も左もないということを、きょうは実証することになる」と宣言したが、まさにその通りになった。

 パレードの先頭が集合場所をスタートして、最後尾が出るまでに小一時間を要した。実行委の発表によると約5千人が参加した。

 「原発反対運動に関わるのは極左集団をはじめとする一部の偏った人たち」というレッテルを警察、原子力村、記者クラブメディアは貼り続けてきた。それも、きょうのパレードと共に過去の遺物となることだろう。

 「私たちは『3・11』前まで、デモに参加したことはなかった。デモは恐いものだと思っていた。でもそうじゃない。子供もこうして参加できる」。こう語る母親(横浜市在住)の表情は晴れやかだった。

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女性は「3・11」後間もなく、「原子力発電所いらない」の缶バッジを友人と共に製作した。=写真:筆者撮影=

女性は「3・11」後間もなく、「原子力発電所いらない」の缶バッジを友人と共に製作した。=写真:筆者撮影=

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