取材車は県道33線に沿って敦賀半島を北上した。民家もまばらとなる地点で西に折れると、行き交う車はほとんどなくなった。道は両側2車線(片側1車線づつ)できれいに整備されている。いわゆる「原発道路」だ。
9・5km走ると巨大な施設に突き当たる。日本原子力研究開発機構の高速増殖炉『もんじゅ』だ。MOX燃料を使うことで消費した量以上に燃料を取り出せる「夢の増殖炉」と持て囃された。ところが相次ぐトラブルで、運転開始から20年が経つにも関わらず、ほんのわずかしか発電していない。
『もんじゅ』のある敦賀市白木地区は戸数10余りのひっそりとした漁村だ。岬の峻厳な山が立ちはだかり、「原発道路」ができるまでは陸の孤島だった。病人が出ると、船で敦賀市の市街地まで運ぶしか方法がなかった。海がシケると助かる命も助からなかった。
道路は原発の恩恵とも言える。だが、原子力発電の災厄を一身に背負う『もんじゅ』のすぐ傍で暮らす白木地区の住民は危険と背中あわせだ。原発の光と影である。
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