大飯原発の再稼働が目前に迫る。「福島の惨事を繰り返してはならない」と願う市民や環境団体が今夕、霞が関周辺で「再稼働反対」を訴えデモ行進した。
関東地方は春の嵐を予感させる不穏な天気となった。どす黒い雲が低く垂れ込め、時折雨がぱらついた。参加者の出足が鈍るのではないかと懸念されたが、デモが始まる午後7時頃には約500人にまで膨らんだ。
デモに先立ち午後6時から日比谷公園で始まった集会には、勤め帰りのサラリーマンやOLの姿が目に付いた。
都内在住の男性(40代)は、早めに仕事を切り上げて参加した。「ここが正念場。原子力村に操られた野田政権は、何が何でも原発をゼロにしたくないのだろうが、こちら(市民)は逆にゼロにするために頑張る」。男性は、けれん味なく語った。
同僚の女性もいつもより早く退社した。「黙っていられなくて、とにかく原発を止めたくて参加した。あと一基という処にきて(野田政権は)バタバタと再稼働を決めようとしている。許せない。一人でも多くの人が声をあげることが大事」。彼女は力を込めた。
集会が佳境に入った頃、雨は本降りに。大飯原発と美浜原発に挟まれた若狭町と日比谷公園を電話で結んだ。「ベントフィルターも免震重要棟も防潮堤もまだ。(野田政権は)大地震が来るかもしれないと怯えている住民の声に応えていない」。原発銀座のど真ん中に住む男性の悲痛な訴えだ。
「再稼働はんたい」「子供をまもれ」…シュプレヒコールは、激しくなった雨音を掻き消した。飛び入りが次々と加わり、1,000人近くが「大飯原発の再稼働反対」を訴えるデモ行進となった。
雨中のデモ取材を終えPCに向かう筆者の耳には、雨宮処凛さん(作家)の言葉が今も響く。「地元(福島)の人は『前の生活を返してくれ』と言っているのに、再稼働なんて4閣僚に人間の心はあるのか?」。
根拠に乏しい「電力不足」を大義名分に大飯原発の再稼働を認めようとする野田政権。人心が離れれば選挙で手痛い目に遭うだろう。
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者の支援によって維持されています。