瀬戸内海の春の陽射しを受ける愛媛県松山市で15日、「伊方原発の再稼働に反対する中国・四国・九州市民の合同緊急集会」が開催された。瀬戸内海の全府県(愛媛、香川、徳島、高知、宮崎、大分、福岡、山口、広島、岡山、兵庫、大阪、和歌山)に、関東からの参加者も加え総勢約200名の市民が集結したのである。
脱原発ネットワークの広がりを示す集会を取材するために、筆者(諏訪)は愛媛まで足を伸ばした。
伊方原発3号機をめぐっては先月9日、原子力安全・保安院がストレステスト1次評価結果を妥当とする審査書を、専門家による意見聴取会に提出した。それ以来、再稼働するのではないかと見られている。
愛媛県の中村時広知事は「(伊方の)再稼働は白紙である」と述べた。現在、再稼働問題の渦中にある大飯原発と比べると地元の抵抗が少ない伊方原発の方が、再稼働は容易と思われるからだ。
さらに18日には保安院の愛媛県庁訪問が予定されている。緊急集会はこれに対抗するために開催された。「伊方原発再稼働に反対する市民やグループが繋がろう」というのだ。作家の広瀬隆さんらが呼びかけた。
「四国・全国からいろいろな人たちが来てくれて心強い。反対勢力が強い大飯原発より伊方原発を再稼働するのではないかと怖い。出力調整(※1)の時も全国9電力の中で一番弱い、四国電力が狙われた。人の命を買った、子供のいのちを買ったのが原発だ」――主催者のひとり斉間淳子さん(八幡浜・原発から子どもを守る女の会=伊方原発から10キロ地点に居住)がスピーチすると、大きな拍手が送られた。
集会に参加した多くの市民は、福島の事故を身近なものと考えている。日本のどこでも起こりうる地震による原発事故を防ごうと集まった。南海トラフ沿いの巨大地震の想定震源域は2倍に、地震の規模はマグニチュード9.0(内閣府発表)に引き上げられた。その結果、中央構造線の活断層上(※2)に立地する伊方原発への危機感はさらに高まった。
「高知も地元だと思っている。福島事故で証明されたように、風向きによって汚染は広範囲に及ぶ。北西の風が吹くと、そのほとんどは高知にくる。風下地元住民として来た」。(高知県四万十市60代女性)
集会では、女性を中心に活発な意見が飛び交った。組織運営や運動の展開が次々と採択された。集会の特徴は、やはり圧倒的に女性が多いことだ。7〜8割は女性で、枠にとらわれない自由な発言が続いた。
最後に、集会の提案者であり、九州電力本店(福岡市)で座り込みを続けている小坂正則さんがこう語った。「福島事故後一年が経過し、全国連絡会が無い事に憤りを感じている。東京への期待は持っていない。このネットワークを皮切りに、大飯原発の再稼働反対運動、浜岡そして全国へと繋がっていきたい」。
一行は翌日、愛媛県庁に『伊方原発・再稼働反対』を申入れた。~つづく~
(文・諏訪 京)
(※1)チェルノブイリ事故の原因の一つとも言われている、出力調整実験(50%出力まで下げた後100%出力に戻す)を1987年と88年に2号機で実施した。
(※2)東海・東南海・南海地震が起きるとされる、世界有数の活断層である。新想定では震度7の激しい揺れに襲われる地域が10県の153市区町村とされた。
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